この本は会計とファイナンスがともにある程度理解できる人でないと読みこなせないと思う。しかし、この本を読んで企業価値評価に必要とされる会計とファイナンスの知識レベルがどの程度なのかを知る事は初学者にとって有意義なことだと思う。
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<br />著者は実際に企業価値評価の分野で実務経験があり、またその分野を大学院で教える立場にもある。真の意味での実務家教員と呼べるのではないだろうか。
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非上場企業のバリュエーションと、上場企業のバリュエーションは、DCF法の手順として
<br />何ら違いはない。したがって、本書のアプローチは非上場企業の価値評価にも当然利用できる。
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<br />ただし実務上、非上場企業に対しては、通常のDCF法で算出した株価を数割割り引いて
<br />取引価格を算定するという実務慣行がある点については、本書では述べられていない。
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<br />この割引(流動性ディスカウント)であるが、ファイナンス理論的には必要性の有無や、
<br />その妥当な水準(実務上は通常2割〜4割といわれる)について、残念ながら明確な
<br />コンセンサスが得られていないのが現状である。
本当のところWACCで企業価値を出すのが理論的かどうかわからないですが、企業価値評価の手順などが詳細に説明されていて、これからその業務を担当して、他人に説明する必要のある人にはよい本であると思います。
<br />だけど、せめてエクセルデータを収録したCDROMををつけてほしい。これらの例題を実際に自分で確かめてみようと思う人には、結構大変なので。
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<br />ちなみに上場企業のバリュエーションが中心であって、非上場企業のそれは例題がない。
<br />なので非上場企業の資本コストの出し方についての説明をもっと充実してほしかった。