バリュエーションの書物は、大きく分けて会計系のアプローチのものと、ファイナンス系のアプローチのものに分かれる。
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<br />私見では、2つのアプローチの違いは、前者が財務諸表の数値から見た会計利益を比較的重視するのに対し、
<br />後者は財務諸表の数値をもとにしつつもキャッシュフローを予測することに比較的ウェイトを置く点であり、
<br />用語の使い方や割引率の考え方にも微妙な差が存在する。
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<br />米国における会計アプローチのバリュエーション本の代表が、パレプ、ヒーリー等による「企業分析入門」
<br />であるとすれば、本書はファイナンス系アプローチの代表書である。
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<br />ファイナンス系バリュエーションの専門家から見る限り、特に本書の訳語に問題が多いようには見受けられない。
<br />訳者たちも十分な経験を持ったプロである。会計士でなければこの手の本を適切に訳せない、という道理はあるまい。
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<br />本書は、第3版までの部分訳から全訳に移行した。特に、株式資本コストの算定におけるβ値とレバレッジの
<br />取り扱いにかかる参考資料(下巻)は、理論的に極めて精緻で、他書に例を見ない。実務でバリュエーションを
<br />現在行っている方も、是非再度本書で自分の計算方法の理論的整合性を見直すことをお勧めする。
以前から思っていたことだが、こんなにすごい本なのに日本語訳が非常にプアーであると思う。
<br />訳者を見てみると、MBAを持っている人はいるみたいだが、日本の公認会計士の資格を持っている人はいない。
<br />だからだろうか、非常にわかりにくくなっている。誤訳も多い。これは今回に始まったことではない。
<br />この本を利用するのは日本人だし、日本の会計基準でバリュエーションも行うのだから日本の会計に精通している人が翻訳すべきだったと思う。それが出来ないのは、マッキンゼーでは日本の公認会計士の地位が低いのだろうか?
<br />日本企業のパートにしても、全然ずれているように思う。
<br />原作のすばらしさに五つ星だが、翻訳のプアさに一つ減点です。
学術的な文献はマッキンゼーだけではない。
<br />今次改訂版(上)は、BS予測手法、ベータ回帰分析の調整
<br />マルチプル法について、より具体的なノウハウを披瀝して
<br />いる。
<br />ただ、全体的に焼き直しの感が否めず、星1つ減にした。