クランボルツ、レヴインの共著“Luck Is No Accident”を慶應義塾大学の花田光世、大木紀子、宮地夕紀子の各先生方が翻訳。訳者も教育学をおやりになっていらっしゃるからであろう、大変よくこなれた日本語で、語りかけるように訳されている。こういう本を、手にする人はどちらかといえば深刻に考え込んでおり、どこに向けてどうやって働きかけたらよいのか、あるいはどうあるべきなのかといった道徳観念のような規範の中でズレに悩んでいるに違いない。
<br />
<br /> ノー天気な人はすでに消化力があるから選択肢から選ぶというより、選択肢を作れるのでキャリア何とかというような指導や本はいらない。
<br />
<br /> 本著は、背景が米国ということもあり、自己の行動にともなって経験する偶然がさまざまな変化を生み出す可能性に力点がある。NPOをはじめ何事にも能動的に取り組もうとか、そうすることで何に興味を持っているのかを知ろうとか、目標は経験によって変化するとかというような展開になる。
<br /> わが国では、目標を立て綿密に準備し苦学力行し、艱難辛苦にめげずに一歩一歩努力する姿をあるべき姿と描きがちだった。私などはその世代。われわれは、本著を読みかような教えも在るのかと、少しずつ安らぎを得つつ、硬さをほぐしてもらえる。
<br />
<br /> 「新しい学習経験をつくるのに遅すぎるということはありません」(p.198)。「じっと座って自分のへそを眺めていることが、情熱を発見する効果的な方法だとは私たちは思いません」(p.207)。このような著者のメッセージを解釈するだけでも、ガムを噛むように楽に一歩踏み出してみる気を、固い石ころ頭にじんわりと得てゆくことができる。履歴書の職歴欄の行数が増えることに悩まれている諸兄に、ご一読を薦める。
<br />
<br />目次、事例小見出しあり、詳しい。索引なし。ひもなし。
<br />
クランボルツの理論を詳しく解説しているわけではないので、研究者や専門家には、あまりおススメできません。
<br />むしろ、キャリアについて、あまり考えたことのない、だけどいまキャリアについて考えはじめている人にはおススメです。
<br />だけど、この本に書いてあることが全てではないので、こういう考え方もあるなあ、くらいに軽く読んだほうが良いと思います。
キャリア開発をテーマにした、親しみやすい本では
<br />ありますが、私は、これを、人生癒しの書と読みました。
<br />
<br />失敗しても、いいじゃないか?
<br />ひとつの職業を一生貫け、という神話は結構しんどい。
<br />目標に向かって計画的に生きていくのって、実際しんどい。
<br />
<br />・・実は、成功哲学、金持ち本などを聞いたり、読んだりして
<br />いても、実感がわかない。そんな折の本書でした。
<br />
<br />キャリアとは、誰のためのものでもない。
<br />生きていくのは、自分。私の幸福を求めた時、世間で言われている
<br />成功法則、ベキ論は、とりあえず横においておいて、
<br />偶然をチャンスに変えて、幸福をつかみましょうよ。
<br />
<br />そう言っている本書は、心が癒されると同時に、生き方に
<br />開放感を与え、閉塞感を打破してくれる、浄化作用があります。
<br />
<br />息詰まった時のお奨めです。