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まともバカ―目は脳の出店 ( 養老 孟司 )

講演録とは言え、かなり気合いの入った内容です。 <br />それでも、難しくはなく、今まで書いてきたこと、喋ったことの反復です。 <br />そういうわけで、同じ内容が所々重複してしまうということも起こります。 <br />この人の感覚は、何かに似ている、そう、ビートたけしである。 <br />ナチュラルに構えていこうということ、つまりは諸行無常を謳っている訳です。

広義の「文化」の表象形式を「無意識的表現」と「意識的表現」に分類することから始まる。「無意識的表現」を、戦後劇的に縮小してしまった「身体的表現」である「型」とおき、「意識的表現」を言語表現の意識的部分、すなわち「シンボリックな言語表現」とおいて話を進めている。これは著書の弟子的存在である斎藤孝と同様のアプローチだ。「文」→「武道」→「ボディビル」→「生首」、このような三島の表現形式の推移こそが「意識的」から「無意識的」に変化する具体例であるとしているのは明確で分かりやすい。この観点から頭脳集団として知られたオウム真理教信者の「身体性」の欠如へと話を進め、意識と無意識の均衡が崩れることへの危うさに警鐘を鳴らす。無意識的なものを生物としての「自然な状態」とし、意識的なものを「特殊な状態」とすることで、「意識」は「非意識」の従属的なもの、と両断しているのはいかにも科学者らしい。フロイト、ユングの”それ”とは大きく異なるこの姿勢は、はじめこそ違和感が生じるが、至る所にちりばめられている論拠を読み落としさせしなければ、その姿勢の正しさに目からウロコが落ちるはずだ。このあたりのことは人工知能工学全般、その中でも「フレーム問題」に通じるところがあり、科学的にも精神学的にもある程度の落としどころとしてしっくりとするはずだ。「バカの壁」以外著書の作品を読んでいない方には多少難解な箇所もあるかもしれない。しかし、著書の長年の主張が存分に詰まった集大成的作品と言っても過言ではない作品であり、是非多くの人に読んでいただきたい良書である。

 「バカの壁」(新潮新書)にはじまった養老孟司ブームいまだ衰えず。手に入りにくかった「脳と自然と日本」「手入れ文化と日本」(共に白日社刊)を再編集した1冊で,1990年代の様々な講演会での発言10本を起こしたもの。これだけ著者の本が店頭に溢れ,その思想・思考が一般的になると,どうしても内容的に目新しさに欠けてしまう。 <br /> 養老ファンとしては好みの分かれるところで,講演録というそもそもの成り立ち上,仕方がないとは思うが,「バカの壁」のように解りやすく丁寧な「〜です」「〜ます」調でもいいという人はともかく,「唯脳論」「身体の文学史」「涼しい脳味噌」などの簡潔な名文と鋭いレトリック展開との格闘のような読書体験を期待すると不満が残る。 <br />  <br />  <br /> <br />  <br /> 

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