世界名作童話などでアメリカやイギリス、カナダなどを舞台にした<br>少女のお話が一杯ある中、日本人の女の子の話はないなあと思って<br>いました。そんな時、この本を読みやっと出会った!!と感じました。<p>現代の私達からは過去の日本は既に知らない世界であり、アメリカ<br>文化のほうが身近に感じるという不思議な時代になりました。<p>だからこそこの本の面白さがわかるようになってきたと思います。<p>原作はアメリカでアメリカ人に向けて英語で書いたものです。日本語<br>で日本人向けに翻訳しなおして発表されたこの本は世界大戦になろう<br>とする鬼畜米英のムードが高まる中でした。<p>そんなことを考えながら読んでみるのも面白いと思います。
「住むところは何処であろうとも、女も男も、武士の生涯には何の変わりもありますまい。御主に対する忠義と御主を守る勇気だけです。」<br>旧長岡藩の元家老の娘として明治維新後に生まれ、武士の娘として育てられた著者が、十代の若さで顔も知らない相手に嫁ぐために渡米する前夜、祖母から贈られる言葉です。<br>「御主」を例えば「愛する者」または「自分の信念」に置き換えれば、これは見事に人間の生き方の理想ではないでしょうか。<br>実体験として語られる上級武士の家の仕来り、婦女子の教育が興味深く、そこで培われた「芯」を持ちながら、新世界にも柔軟に対応していく著者の人間性に頭が下がります。<br>当時とは比べものにならない便利な世の中に暮らし、「自由」を当然のこととして誰に憚ることなく自己主張できる現代で、真に忠義と勇気を捧げる対象を持たない自分を恥じ入るばかりです。