社会問題がテレビ等のメディアで「娯楽化」しています。
<br />イメージ先行の扇情的な情報を生産するのに夢中で、
<br />実態の検証がおろそかになっていないでしょうか。
<br />また、我々は、扇情的な情報を大量消費するだけでよいのでしょうか。
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<br />本書で紹介される「クリテキカル・シンキング」は、情報を鵜呑みにしない批判的な思考法です。
<br />その思考法の利点と限界は何か。
<br />極端に懐疑主義に走ったり、逆に、極端に全てを信じてしまう、この両極端の間でどう折り合いをつけるか。
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<br />筆者は「ほどよい懐疑主義」「文脈主義」を提唱します。
<br />哲学は日常生活でこそ試され磨かれていきます。
<br />本書は、クリテキカル・シンキングを軸に、哲学のエッセンスを探求します。
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<br />イメージ先行の情報に踊らされてしまうのは危険です。
<br />ある程度の思考トレーニングは現代において必須だと思います。
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著者の伊勢田氏の旧著『疑似科学と科学の哲学』(名古屋大学出版会)が面白そうで、読もうと思ったが、かなり大きめ(重め)の本で、通勤電車の中で読みづらそうなので、代わりにこの新書を(通勤時に)読むことにした。通勤電車乗車時間往復約1時間×3〜4日で読了。文体が語り口調で殆どスラスラ読める。特に本文中折々挿入される( )内に入った注釈に作者の本音が垣間見れて微笑ましい。でも内容的には「哲学」というよりも「クリティカル・シンキング入門」といった趣向で、ビジネス書、ハウツー本のジャンルになるのでは?こちらが期待していた「疑似科学」についての話題も「今西進化論」についてのみでやや物足りなかった。最大の収穫は著者の哲学観をごくコンパクトにまとめた16〜17ページの「「哲学的」考え方のいろいろ」の節。このページだけは哲学入門を志す全ての人が読むべきだと思った。
「哲学ってなんか小難しくて、しかも不毛な結果に終わっちゃう」。
<br />一般にはそんな印象が往々にしてあるんじゃないでしょうか。
<br />自分もなんとなく敬遠してました。
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<br />しかし著者の噛み砕いて平易な文章はさくさく読めるので、
<br />机の上で格闘せずに通勤・通学の電車でいけます。
<br />ターゲット読者を考えれば
<br />細かい議論を避けたかなりの簡略化も気になりませんでした。