日本の歴史が農業を中心に見ていて、常民が土地と結びついた農民のことと誤解し、すべてを農本主義的な視点で捉えていたことに対して、本書はその過ちを具体的に反証していく。百姓という言葉をそのまま農民と誤解し、日本が極東の孤島だという発想に基づく、過去の歴史観に破産宣告をした画期的な本であり、百姓は中国の古典が使っているように、人々という意味なのである以上は、その中に山人、漁民、商人、工人などが当然ふくまれている。そういう視点で日本の歴史と言われるものを読み直せば、縄文文化と呼ばれるものも孤島としての日本ではなく、アジア大陸のシベリアや沿海州に始まり、中国や朝鮮どころか南洋諸島を含めた、広大な古代史の一環になるということが分かる。国民国家という固定観念に毒されて、民族主義的な偏見に支配された歴史観を乗り越え、生きた歴史を学ぶという意味で、非常に刺激的で教訓的な視点を持つ本である。
良くわかっていなかった日本の中世史を文字文化の普及、貨幣経済の浸透、女性の地位の変化などで15世紀を境に日本の社会構造が変化したことを指摘しています。
<br />実に興味深いが、近世以降の歴史認識が甘い点が少し難点です。
網野史学を理解する為の本と言って良い本である。
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<br />中世史の中で記録も無い庶民達の動向がどのようであったのか?また従来から言われている百姓が果たして農民を指しているのか?権力者からの視点でもない庶民達の中世史を優しく描いている。
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<br />網野氏もイデオロギー的見地で見ている部分がある為に批判も受けてはいるが、それを加味しても庶民達の歴史を発掘する重要さと、偏見を克服する為の理解の重要さを説いている所は特に考えるべきではないだろうか。
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<br />この本を読んだ後で、宮崎アニメ「もののけ姫」を見ると、更に「網野ワールド」が広がるでしょう。