科学者というよりも、錬金術とか神学に通ずるものを
<br /> もっているなぁ、と。
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<br /> この作品は茂木氏の他の著作よりも、比較的読みやすく書いてるな。とも
<br /> 思いました。
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<br /> 若い時の作品だからでしょうか。
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ようやく再版された名著。著者ご本人も巻末に書いているが出版時の33才という年齢であったから書けた本であろう。医学や生物学といった物理的解析研究はもちろんのこと己の思考に対してすら反証可能性を掲げ、哲学的検証へのアプローチをも必要とする難解な学術分野である脳科学界。その世界のホープである茂木健一郎が「脳とクオリア」でみせた成熟しきったクオリアへの論理展開、あの超人的思考にたどり着く以前の自分をみせる。すなわち人生を模索し混沌とした思考のままの「人間」茂木健一郎を発見することができる。もとは立花隆が興した一連の「臨死体験」ムーブメントに対するアンチテーゼをメインテーマに掲げ書き始めた作品である。だが、「生死」を書くうちに、筆者本人の死生観と原体験からはじまる、後悔、逡巡、欺瞞、渇望などのイドが溢れだし抑制不可能となった思考の渦に自身が巻き込まれていく様はあまりにも若々しい。言い換えると「クオリア」をパブリックな開かれた思考によってではなく「私」という極めてプライベートな立場で語っている。従って著書のどの本よりも肉感的な「クオリア」がそこにある。科学者茂木健一郎ではなく文学者茂木健一郎を見つけることができる貴重な本である。
長らく絶版で手に入らなかった茂木さんの最初の随筆が、文庫になって読めるようになりました。嬉しいです。
<br />茂木さんは脳科学者ですが、この本はあまり脳科学の話は出てきません。でも、茂木さんがなぜ「クオリア」なんて大問題に取り組むようになったか、その片鱗を知ることができます。
<br />青年茂木健一郎を知ることができ、さわやかな読後感で満たされました。