エロ漫画編集者としては、知る人ぞ知る塩山芳明氏。その氏の1990年〜2005年までの、なんと15年間にわたる毒舌日記が本書。一般的には知られることのない塩山氏だが、何の知識のない人でも出版業界に興味さえあれば、一気に読み終われる楽しい内容(傍から見れば)。
<br />ただし、できるなら、塩山氏の編集者としてのすごさ(MATEやレモンクラブなどを見ればビシビシと伝わってくる)を知ってから、本書を読んだほうが、なお楽しめる。毒舌は味付けで、その中に隠されたエロ漫画編集者としてのプライド、悲哀、その他もろもろがなんともいえない。エロ漫画編集者として、娘の行く末を案じる姿などは、とってもリアリティがある。
大手出版社や取次ぎに纏るオフレコ話を期待したが、結局は著者本人の日記・・と言うよりもメモを羅列しただけの本。やはり今の出版流通業界で本音を吐露したら生きていけないんだろうな・・と、実感させられました。
本当に面白く一気に読んでしまった。この日記の内訳は約7割がエロ漫画編輯者としての仕事の話、約3割が読書家・映画鑑賞者としての本・映画の話だ。だがいずれも塩山芳明という著者の強烈な個性で貫かれており、両者の混在に少しも違和感がない。漫画業界の話には、外部の人間のための解説などは何もなく、知らない漫画家がぞろぞろ出てきて実に不親切なのだが、分からないなりに楽しめてしまうから不思議だ。本の感想も、著者のような鮮やかな短文で書かれた文章を読むと、長い書評などに何の意味があるのかとすら思えてくる。
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<br /> 誰かまわず毒舌を吐く著者は近寄り難く、嫌な奴だとの印象を与えるが、福田和也に褒められてぼーっとなっているくだりなどを読むと、いつのまにか可愛いと思えてくるのが恐ろしい。この愛嬌がこの日記を魅力的たらしめているのだ。一つだけ意外だったのが、表紙裏の写真に写っている著者が太っていなかったこと。私は勝手に塩山氏をデブだと思い込んでいたのだ。
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<br /> 編輯を担当した南陀楼綾繁にあえて注文を出せば、ブックガイドとして利用するために、人名索引などつけてほしかった。