藤原正彦さんの小学校のときの図工の先生が安野先生。
<br />そのお二人の対談を、藤原さんの四年後輩の筑摩書房・松田哲夫氏が
<br />ちくまプリマー新書の一冊にしたのだな、ということが
<br />「まえがき」を読むとわかります。
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<br />さて、ともすればきれいにきまり過ぎた感じのあるタイトルですが
<br />(『世にも美しい日本語入門』)、
<br />安野先生自ら、『「日本語が美しい」とはどういう意味なのか』
<br />と問い、かつそれに答えてくださっています。
<br />私も、その答えになるほど、と思い、
<br />あらためて日本語を振り返ってみたい気持ちになりました。
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<br />日本には、大量多様の日本語の蓄積があります。
<br />お二人に上手に紹介されている書籍に素直にあたるのも一興、
<br />何か思い出して「あれ読んでみるかな」と思ってみるのも一興、
<br />まさにこれは、回れ右して日本語に入門するための本でありました。
藤原さんは、ゼミで学生に「強制的」に本を読ませているそうです。その書名をこの本で知ることが出来ます。ホントに強制しても意義のある良書ばかりですから、読書案内として活用するのもいいと思います。
話題の書「国家の品格」の著者・藤原正彦氏(お茶の水女子大学教授)と、その小学校時代の図工教師だった安野光雅氏(画家)の二人による、日本語談義をまとめた書です。
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<br /> 意味が分からなくとも良いから幼いころから文語で書かれた書を読ませて、日本語のリズミカルな美しさを体にしみこませることが大切。小学唱歌や童謡などもその良き教材となりうるのであり、現代の生活にはなじみの薄い歌詞だからという理由で教えなくなった最近の風潮は嘆かわしい。などなど、いちいちごもっともと思える内容が満載です。
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<br /> 本書は日本人の言葉に対する自尊心をくすぐるエピソードも数多く載っています。1000年以上もの厚い歴史を持つ日本文学の流れ。江戸時代にすでに50%の高さに達していた識字率。英語やフランス語よりも日本語は日常使う単語が5倍も多いという事実。
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<br /> しかし肝要なのは、そういう誇り高き日本語話者の一員に果たして自分を数えることができるかどうかを今一度見つめなおすことでしょう。確かに日本語は美しい。しかし自分の日本語が十分に美しいといえるほど鍛錬を積んでいるかどうかは別問題なのです。
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<br /> 自分もその一員であり続けたいという思いを新たにする一冊です。
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