自身も書いているように、著者には成人した重度脳性マヒの子どもがいる。 殆どの障がいをもつ親は、子離れができず、自分の分身かペットのように思っているとしか理解できない囲い込みで、社会構成員として送り出す事を拒んでいるのが現状だが、その点では親として吹っ切れている当事者でありながらも冷静な視点から物事を捉え、税金で養われるのではなく、税金を支払う社会人として障がい者を捉えらる際の問題点を挙げている。
<br /> ただ、現場の施設職員などは、充分分かりきった事柄であろう指摘が多く、クロネコヤマトの故小倉会長がはじめたパン屋や、米スターバックスで働く知的障がい者の実例など、雇用の具体的提案までは踏み込めていない。
<br /> 施策に関わる者・施設長等の管理者・親や保護者は是非読むべきである。
内部の視点から描かれることの多かった障害者の世界を外部の経済学の視点から捉えようとした試みには好感を覚えた。
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<br />どうも障害者というと一歩引いてしまうのが現在の世相。
<br />それは外部の世界の人の偏見ではない。
<br />障害者の世界に関与する人々が手厚い行政の保護に安住したことと、敢えて外部の理解を求めようとしてこなかったのにあるだろう。
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<br />内部の人間から見るとなかなか辛辣な事が書いてある。
<br />それも著者の言うように当事者感覚をひとまず措いて読んでみるとなかなか正鵠を得た意見である。
<br />「正しい」かどうかはわからない。ただ、外部の目からはこう見えるということはよくわかった。
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<br />また、障害者という世界から日本の社会や経済の仕組みを照射したという側面もある。
<br />障害者の世界とは一種の辺境である。
<br />そして辺境からこそ中心をよく見ることができる。
<br />法規制、行政と業界の関係、親子関係、学校社会・・・
<br />辺境であるからこそ凝縮した社会の問題が見えてきている。
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経済学と言う以上は、資源の適正な配分を目的とする学問なので、施設
<br />の話をするなら雇用創出や関連産業への波及効果などの話を期待してい
<br />たのだが・・・障害者本人の社会参加の話で終わらせるのは、どうかと
<br />思う。
<br />いわゆるタブー視しがちな部分に手をつけた勇気は賞賛すべきであるが。