・ミンツバーグの著書は難解なものが多く、ポーター理論のように分りやすいとは言えない。
<br />・しかし、大学で戦略論を専攻しているような方には必携の本である。初学者が読んでも、学派を10派にまで広げると途中で挫折してしまう。これが本書の短所である。
<br />・しかし、ミンツバーグは「辛口」と心得て、ポーターの「甘口」に飽きた方には良い味がする本であることに間違いは無いはずである。
<br />・要するに、本書は「大人の辛さ」を持った本である。読めば「ミンツバーグの味」が染み渡り癖になる本である。
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ミンツバーグ先生らが、既存の戦略論を10の学派に分類し、それぞれの理論について論じた本です。
<br />戦略マネジメントとして語られる範囲は広く、どの範囲の議論を戦略論とするかは研究者それぞれに異なると思います。そのなかで、本書の10の分類は、以前にはないようなユニークな分類をしており、まずその点に目が行きます。また各理論の分析も鋭く、考えさせられるものが多いことも評価できます。戦略論に興味のある方は一読してみるといいと思います。
<br />ただ個人的には、誰が本書の読者として適しているかと考えた場合、実務家というよりも、この領域を専攻している大学院修士課程程度の知識のある方が読むと勉強になるのではないかと思います。具体的にいうと、本書に書かれている理論を本書で初めて触れる場合、ミンツバーグ先生らの議論についていけないのではないかと読んでいて感じました。本書をよく理解するには、各理論を本書以前に触れたことがあり、かつ、参考文献に挙げられている各理論の代表的な本/ジャーナル・ペーパーを事前に目を通し、ある程度理解している必要があると思います。そのような状態で本書を読むとミンツバーグ先生らの指摘がおもしろいものに思えると思います。
ミンツバーグらしく、解を単純にしすぎずに、様々な戦略論を提示し、そのパターン分類やメリット・デメリットを充分に解説しています。
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<br />戦略論の学習をこれから始めようとされている方にはお薦めだと思います。ただ、本書に登場する戦略論については、ある程度の知識が必要になってしまいます。
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<br />また、本書初版から現在までの間に、人についての自然科学がものすごい勢いで発展しています。従って、人そのものに着目した記述部分については、他の書籍で知識をアップデートしたほうがよいと思います。