米国のビジネス書には、とことん調査を重ね法則を導き出した良書がある。例えばビジョナリーカンパニーが好例である。そうした視点で見ると、あまりに乱暴な議論の展開があるところは気になる。しかし、レビューの筆者自身、東北地方の製造業の再生に必死になっているところで、導かれている結論は、多くの点で頷けるのも事実である。 通勤電車で読み、「ヨシ!」という気合をいれるのに良い本である。
ビジネス書の中でもかなり売れている本で、その理由はなぜかを考えると、ご自身の経験に基づく地に足のついた記述にあふれていることから、読者の共感を呼び覚まし、説得力があるからだと思う。著名コンサルタントの書くビジネス書にありがちな、「ご高説を賜る」という感じではなく、フワフワしたところがない。筆者は、企業の力の源泉は現場にあり、トヨタやクロネコヤマトや花王などのように強い現場を持っている企業は総じて成功していることに着目し、そういった企業でどのように経営企画部門と現場の関係を設計しているのか、現場における改善運動をどのように不断の流れとできているのかなどを分析している。個人的に響いた点は、とにかく経営企画部門と現場の間のコミュニケーションの質と量を増やすこと、現場をもっと信頼して責任と権限を大胆に委譲することの 2点である。大層なビジョンや戦略を掲げたものの実践できない組織、トップマネジメントがお題目として「現場主義」や「権限委譲」などを唱えるものの実態が伴わない組織は世の中に実践できていない場合がほとんど。これらをどのように実践するのかまで踏み込んで記述している点で本書は有益だと思う。
これまで,現場力と言う言葉を知りませんでした。
<br />この本を読んで,ほんとに伸びる企業,競争に勝てる企業はどのような努力をしているのかが分かりました。ホワイトカラー,ブルーカラーと言う言葉は昔の話で,経営者から現場作業者が一体とならなければならないことがよく分かりました。その代表がトヨタだと思っていましたが,多種業種で,同じ考えで改善が進められていることを知り,目から鱗が落ちました。トヨタ方式がベストではないかもしれませんが,いろんな業種で,日本の風土にあった改善活動が進められることを期待すると同時に,この本を参考に少しでも改善が進められる企業が増えることを期待します。