本書は、論文を書くまえ、もっといえば、テーマを決める前で論文を書こうと決めた直後くらいに読むのが良いと思う。論文が他の文章、例えばエッセイなどと大きく違うのは、「これまでの当該領域の知の体系には存在しなかった新しい知見」と、「それを導きだした、あるいは発見できたプロセスあるいは手法」の二つが銘記されていることだろう。更にいえば、上記の新しい知見が、既存の古い知見に対して順接なのか、逆説なのかを、既存の知見を示しつつ明示することも必要である。そしてこの際、引用の作法にも気をつけなくてはならない。
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<br />と、色々なことを気付くにはよい本。
読める、院生というよりは、社会科学初心者に役に立つ本だと思います。<p>訳者前書きに書かれているとおり、日本の社会科学系大学の教授というのは叩き上げのメーカーOBが多かったりして、話を聞く分にはいいのだけど、いざ研究をとなると自然科学のような整った研究手法がなく教授にもアカデミックな内容は頼れず、何の指標も立てられず半端な研究結果になっているのが現状です。<br>私も含めそんな迷える小羊たちに一筋の光明をもたらしてくる本だと思います。<p>ただ原著をだいぶ取捨選択してまとめてあり、社会科学らしい軽さを感じる内容で、この軽さをいかに払拭するか、もう少し深い内容があってもいいと思ったので星4つです。
本書は大学院に入学して今から修士論文や博士論文に取り掛かろうとしている院生に向けてかかれたものです。技術的なことよりも、研究がどのようなプロセスを経てなされるのか、そしてその戦略・戦術をどのようにして練るべきなのかといったことが書かれています。また、経験的証拠の取り扱い方の章もあります。その章では、なぜ経験的証拠を集めなければならないのかという問いや、証拠を集めるための様々な方法のそれぞれの特徴について言及しています。また、具体的な研究方法として、質問表の具体的な作成方法やケース・スタディの特徴(プロセス・ケーススタディの種類・証拠の収集のやり方)についても述べられています。巻末には、さらに学びたい人のための書籍リストや索引も充実しており、研究を今から始めるという人にとってはわかりやすい入門書だと思います。<br>星を4つにした理由は、もう少し論文作成にいかすことのできる項目(例:引用の仕方)について言及してあってもいいのではないかと思ったためです。