この本は第二次世界大戦時、ドイツ軍の戦車エースだったオットー・カリウスを描いた戦記絵本です。<br />カリウス氏の著書からナルヴァ戦線部分のみを抜粋して漫画化しています。<br />オールカラーで綺麗な本です。絵はおそらく定規を使わずに描かれており、台詞も全て手書き。画風に味があって良いです。戦車や戦闘シーンも迫力です。<br />ただし、何故か登場人物が全員ブタの顔(笑) そのため戦争モノだけどコミカルな作風になっています。<br /><br />戦車や飛行艇、戦記モノが好きな宮崎駿さん。<br />ただ好きなだけじゃない。多くの文献を読んで勉強しておられるのに脱帽です。<br />この本を描くにあたっても、敵味方の配置や侵攻方向など自分なりに考察、ついにはカリウス本人に会いにドイツまで行ってしまいます。<br />妥協を許さない職人肌の氏らしいです。<br />カリウスも同じですね。常に慎重で冷静。劣勢でも最善を尽くし、努力を怠らない。先を見通す眼力を持って、狂気の時代を正気で生き抜いた稀有の人です。<br />この本を読んでカリウスやティーガーにとても興味を持ちました。『ティーガー戦車隊』もいずれ読んでみたいです。<br />同時収録の『ハンスの帰還』は、リアリティを追求せずに軽い気持ちで読んでほしいかも…。<br /><br />高価ですがそれ相応の価値はあると思います。<br />ただし戦車や戦記モノが嫌いな方、映画のようなファンタジーを期待してる方にはお薦めできません。
本作は同じ出版社から出ているオットー・カリウス『ティーガー戦車隊』の上巻にインスパイアされた、宮崎駿の妄想が元になっています。時間・場所・主要人物は同書に取材していますが、ディテールは妄想です。だから、ものすごく面白いです!
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<br />私は、非常に読みにくい『ティーガー戦車隊』の解説書として本書を読みました。本書と『雑想ノート』を頭に入れて戦車戦もののノンフィクションを読むとイメージを喚起しやすいんですね。『ティーガー戦車隊』は本物の戦車兵が書いた本だけに、重量感・圧迫感・寒さ暑さ・悪臭・被弾の衝撃といったことは“基本事項”ですからあんまり触れてないんです。逆に宮崎駿は、こうした“書かれてない事”を一こま一こまに克明に盛り込もうとしています。
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<br />宮崎さんの書き文字は、昭和の古い左翼のアジビラやガリ版を連想します。新左翼じゃなくて労働運動みたいなやつね。思うに、彼はモデルである戦車兵カリウスに、働く人間として共感し、その情熱を紙の上に再現したくなったんじゃないかと。漫画家とモデルが同志愛のようなもので連帯してる。読者である私も、同じ働く人間として、彼らに共感します。彼らを讃えたいし、彼らのように誇りを以て働きたいと思う。
<br />この気持ちが、この凄惨な戦闘シーンばかりが続く漫画を、さわやかな読後感にしているのではないでしょうか。
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<br />フルカラーの素晴らしい絵本です。私が買った第二版は序盤のページが少し版ズレしており、色鉛筆の書き文字が読みにくいのですが(スミ文字はちゃんと読める)、そんな瑕疵はどうでもいいくらい素晴らしい出来です。同時収録の「ハンスの帰還」も楽しいし(個人的には美少女がヒロイックに描かれておりあまり好きじゃないですが)、他のスタッフによる解説読み物はとても素晴らしい。みんないい仕事してます。
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<br />マニアックな本ですが、読む者をけっして失望させないでしょう。とても濃いものが詰まった本だからです。
この本はジブリの映画でしか、宮崎駿を知らない方は買ってはいけません。
<br />これは有名な戦車オタクとしての宮崎駿が、そのオタクぶりを発揮して、なんとバルト三国のエストニアまで行ってしまう内容です。
<br />なぜエストニア?ドイツ軍の戦車エース、オットー・カリウスがソ連軍と激戦をしたところだからです。
<br />その内容は詳細で、本当にこの人はオタクだなあと誉めたくなるものです。ソ連軍の対戦車砲はどこにあったのか?
<br />敵の総攻撃に対し、どちらからどのように進んだのか?などなど。ほんとにオタクだ。
<br />その後、ドイツに行ってオットー・カリウス自身と出会い、
<br />「このときはどうしていたのか?」「この時点でのティーガー戦車の位置は?」など質問攻め。カリウスお祖父ちゃんもびっくりしたでしょうね。
<br />ドランシとハンスの4号戦車での脱出作戦もおもしろい。
<br />モデル・グラフィックスで4号戦車を何とかしようとしていた企画を思い出す。
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