元々は相当ボリュームのある、難解で根気の要る書物だったと思われます。
<br />しかし本書では、読みやすく豊富な注釈が読み手の理解をかなり助けてくれます。
<br />マズローの名と『自己実現』という言葉は、高校の教科書で目にするばかりか、診断士や社労士など人的資源管理に関わる国家資格でも不可避となっています。しかし多くの実務家は教科書の図をマニュアル用にコピーするか、“心が学者の理屈どおりになるわけない”と関心を持たないかです。“怪しいセミナー講師の常套句”と思う人さえいるでしょう。彼の本職が神経症の研究だという事も、知名度と比べれば知られていません。そのマズローの手になる、数少ない経営理論書です。
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<br />『自己実現』という言葉の安易な美化を、言葉を広めた本人は怒りを込め激しく非難します。擬似科学扱いされていた当時の心理学にあって、臨床や実地調査から、企業社会の現実を見据え論じています。自説の統計学的検証が不十分であると認め過信を戒めて、より精密で詳細な研究が必要だと唱えています。
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<br />気が遠くなるほど壮大な理想を追っていますが、一部で誤解されてきたような怪しい自己啓発論の元祖ではありません。斬新なるがゆえ限界があったのでしょう。人的資源論を本気で実務に活かしたいと考える方には、巷に出回る粗悪な模造品ではなく、ぜひ本書に触れる事をお勧めします。
<br />少なくとも、安易な引用で恥をかく事はなくなります(笑。
マズローって「欲求の5段階」説を唱えた人だろ、フフン、と鼻で笑っていた自分の浅はかさを知らされました。
<br />この人は天才ですね。
<br />その問いの立て方は鋭すぎます!
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第一級の心理学者が実際に企業をくまなく観察し、気になったことをエッセイとして書き下ろした本です。
<br />経営の大家である故P・F・ドラッカーの理論の間違いを指摘するぐらいの内容となっています。
<br />(この顛末はドラッカーの「マネジメント 上下」に書かれています)
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<br />そこらの経営学者が論じる経営理論と比べると、明らかにレベルの高い内容になっています。
<br />人という経営において最も複雑な資源を理解していない経営理論が多い中、
<br />本書は貴重なマネジメント書籍として必読です。
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<br />あと、経営に役立つ理論を提供している心理学者として、
<br />カール・E・ワイク、M・チクセントミハイをお薦めします。