U2のボノにもルービンは会ってるのね、生粋の東海岸の人でHLSに行ったわけじゃなかったのね。典型的な「パワーエリート」と目されるルービンだが、本書ではその謙虚かつ冷めた思考過程に触れることができる。世界経済の13daysとも考えられる南米及びアジア経済危機への対処の経緯も詳述されエキサイティングな読み物である。
<br />リボルビングドアの意義を考える人、金融商品開発側にいる人や志ある行政官には必読かと。
いま、あなたの目の前に憧れの人がいるとしよう。その人が好きで好きでたまらない。でも、実際のところ、あなたがその人に何のアプローチもしないとしても、世界に対しては何の影響もない。もしかしたら、あなたたちの子供が救世主になるかもしれないが、実現しない未来には誰もケチをつけない。しかし、たとえ実現しなくてもケチをつけられてしまう人達がいる。だが、決断しなければならない。それが政治家だ。
<br /> ロバート・E・ルービン。第70代アメリカ合衆国財務長官。この本の著者だ。彼曰く、彼の思想の根底にあるのは蓋然的思考。すなわち、世の中に確実なことなど何もないのだから、どんな起こりえないと思える事態も起こりうる。そんな思想の元にアメリカ経済を牽引してきた男。
<br /> なぜ彼がそんな思想に支配されたのか。この本を読めばその一端が理解できることだろう。アメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスで裁定取引に従事し、市場ではどんな事態でも起こりうると言うことをその身に刻んできたのだから。
<br /> お金を儲けたいだけならば、別に政治家になどなる必要がない。彼の根底には、政治への熱望が潜んでいたのだろう。この本には、クリントン前大統領への深い敬意とともに、自らが実施してきた経済政策の裏面が率直に記されている。まさに、生きた経済の教科書。
<br /> また、政治の世界の恐ろしさも垣間見ることができる。たとえ自分が信じていなくても、政敵を追い落とすためならばどんなことでも利用するえげつなさ。自分の正義を貫くためには道を選ばない。
<br /> 結局、経済政策は結果のみによって評価されるもので、どんな高尚な理論もそれだけでは何の役にも立たないのだということが分かると思います。
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確率論的な思考(蓋然性思考)を自分の信条として、ゴールドマンサックス、大統領経済諮問委員会、財務省のトップとしていかに意思決定をしてきたかという、ルービン氏の意思決定の回顧録である。<p>特筆すべきは、経済理論がルービン氏の蓋然的思考を経て、いかにワシントンの政治の中で実現されていくのかが詳細に述べられていることである。なかでもメキシコの債務危機やアジアの通貨危機に介入する中で、モラルハザードと金融危機回避という矛盾する選択肢の中からをいかに適切なものを選択肢し、議会に承認させていくのかという過程をクリントン大統領や経済諮問委員会、またグリーンスパンFRB議長、後のサマーズ財務長官との会話を通して描かれていきます。経済理論を書いた本は多いのですが、実際にいかに様々な経済理論が妥協も交えながら政策として実行されるのか、この本のように具体的に書かれた本は少ないように思えます。<p>また、とくにこの本に好感が持てるのは、自分がした意思決定の状況を実に客観的に述べていることです。自分の意思決定の失敗も素直に認め、いかに自分が判断ミスをしたのか冷静に分析している点です。非常に参考になります。著者いわく、そのような性格が著者本人がアービトラージャーとして成功した要因だと述べています。<p>さらに、この本はクリントン政権の経済政策を評価する上で大変貴重な本だとも思います。スキャンダルに関するクリントン氏の本が多い中で、クリントンが新設した大統領経済諮問委員会の初代委員長であるルービン氏が、いかなる経済政策が考え出され、それがどのような紆余曲折をへて実現、時には挫折したかが描かれてあります。<p>500ページ以上ある本ですが、その1ページ1ページ非常に楽しんで読めると思います。