一気に読める経営書。とにかくストーリーが面白い。思わず感情移入してしまうキャラクターに、微妙な心理描写、ただの経営のプロではない筆者の非凡な才能を感じずにいられない作品。<p>経営書としての充実度もさることながら、一介のサラリーマンである私に非常に勇気を与えてくれる内容であった。他の同僚とは違うリスクある選択を果敢に行い見事に成功をおさめる主人公の伊達陽介には、組織の「一部」でしかない私の会社人生に一石を投じた。<p>かといって経営者の道を選択した主人公が簡単に成功を手に入れるわけでもなく、さまざまな場面で悩み葛藤しながらもロジカルな解決策を考え出すのであるが、ロジカルであるだけではうまくまわらない組織の難しさも提示しており、経営の奥深さを考えされられる。<p>この本は筆者のいう「経営の疑似体験」の一つとなる。一人でも多くの人に読んでもらいたい作品です。
好評を博した「戦略プロフェッショナル」に続く経営革新ストーリーである。著者が実体験したいくつかの再建事例をもとにノベライゼーションを行なうという手法を踏襲している。<br>ビジネス書としての論理性を犠牲にすることなく、臨場感のある小説として仕上げた手法は相変わらず見事である。前作以上に複雑な舞台設定を用意し、更に突っ込んだ戦略理論を展開する構成となっている。主人公の役柄も基本的な戦略理論を十分に身につけ、国際舞台での経験も積んだ若手エリートといったところである。主人公が日本的エリートの弱みを見せつつ、それを克服しながら成長していく姿に好感が持てる。<br>ただし、前作を上回るインパクトがあったかというとそうでもない。ビジネス書としての価値を高めようとする意図からだと思われるが、戦略の効果があまりに見事に実現する様子から、本当にあった話なのかという疑問がどうしても浮かんでくるのである。生のビジネスの赤裸々さは明らかに前作の方が上である。この手の著作にそこまで求めるのは酷な気もするが、真の変革能力を持った経営プロフェッショナルの育成に示唆を与える目的を持った著作であるからこそ、厳しい基準で評価したい。
単なる理論の羅列ではなく、実際に企業の中で行われうる戦略が小説仕立てで書かれている。従って感情移入が出来るし、疑似体験も出来る。特に企業戦略のチェックサイクルや、提携先探しの意思決定の記述は非常に役に立つと思う。私も同様の仕事をする身として、常に机に置いておきたい本の一冊である。