アメーバ経営とは、市場に直結した部門別採算制度をベースに、リーダーを育成し、全員参加型経営を実現させるためのものである。京セラ名誉会長 稲盛氏が高収益・高成長を実現した京セラの成功の根幹を惜しげもなく披露する。
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<br />本書に書いてある「アメーバ経営」の原理・原則自体は非常にシンプルで分かりやすい。従来コストセンターと考えられることの多かった製造部門を含め、各部門の成果を「時間当たり(の付加価値)」という尺度で測り、社内取引を通じて市場に即応したコスト・生産管理ができるこの仕組みは、外部環境の変化に応じて、次々の形を変える生物の仕組みと非常に類似している、という点で「アメーバ」というのは言い得て妙な表現である。
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<br />ただし、本書を読めば、この仕組みは単に枠組みを導入しただけでは決してうまくいかないことも分かる。むしろ、その裏にある哲学、経営者の高潔な人格とコミットメント、従業員全員の熱意などがベースとなっていることが分かる。その意味では、この仕組みを導入し、成功させるためには、稲盛氏と同等の経営センス、人格とコミットメントが必要となるということだ。これは実際のハードルは高い。そこまでの力のない普通の企業がこの仕組みを導入したら、アメーバ間の利害対立が即表面化し、収拾がつかなくなるであろう。
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<br />本書に即効性を期待すると期待はずれかもしれない。ただし、長期的には、会社全体の成長性・収益性を高め、人材が育ち、従業員のモラルも高く保つことができる優れた仕組みであることも確かなので、熱意のある経営者の方には是非挑戦してもらいたい。
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<br />心に残った一節。「経営とは日々の判断が集積したものであり、その結果が実績となって現れるものである」
「稲盛和夫の実学」を読んでからをおすすめします。
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<br />原理原則に基づき、本質を見極め、人間として何が正しいかという判断によって、
<br />実践される経営手法を具体的な事例をもって説明されています。
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<br />私の会社では、社内のインフラを担う部署の評価が正しく行われていないのではないか、
<br />という疑問を強く抱いており、それを解決できるかもしれないという思いで、
<br />本書に興味を持ったわけです。
<br />アメーバと呼ぶユニットごとに採算を管理する方法や、その目的などが様々な視点から
<br />説明されており、これに近いものが導入できれば、先述したような問題を解決できる
<br />可能性があると感じました。
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<br />読んでいくうちに気づいたことですが、この稲盛和夫さんは相当魅力的な人です。
<br />正面から従業員に向き合う姿勢や、従業員を幸せにしようとする気持ちなど、
<br />読んでいると魅了されます。
<br />この本の一番のみどころはここなのかもしれません。
アメーバ経営と聞くと、なんとなく、ドロドロした印象を受けたのだが、アメーバ経営という言葉は、その形ではなく最小の単位、という意味で使われている。
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<br />アメーバという小さな組織を作り、そのリーダーは、その組織の経営者という意識を持つことで、部門ごとに採算が取れるようになる。
<br />そして、企業としても大きな利益を生み出すようになる。
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<br />「社員1人1人が経営者」という気持ちを持って働くことが、企業を成長させていく、という稲盛氏の考えには、大いにうなずくところがある。
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<br />「言われることだけやって給料をもらっていればよい」
<br />「ミスしたら、上司の責任にすればよい」
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<br />というような考えで仕事をしていては、成長は期待できない。
<br />すべての社員が同じ目標を持ち、全体として、すばらしい仕事をすることが、企業の役目であり、社員にそのように考えさせるのが、経営者の役割であるということを思わせられた一冊だった。