イマキュレーさんは、「大長今」のチャングムのように、勇気と知恵で生き延び、夢を実現した女性だ。
<br /> 『無所有』や『白凡逸志』も感銘を受けた本だけども、イマキュレーさんのこの本は、人生の価値観を変えてしまうほどの衝撃的な本だ。
「ルワンダ」「難民」といった言葉はなんとなく耳にしたことがあっても大量虐殺についてはあまり報道されていなかったのか、記憶にないというのが正直なところでした。
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<br />「生かされて」というタイトルに惹かれ読みはじめました。
<br />なぜ「生きる」「生き残った」ではなく「生かされて」なのか・・・この本を読み進めていくとその理由がわかります。
<br />昨日まで隣人だった友人が、ある日殺人者になって襲い掛かってくる。
<br />民族の違い、貧富の差で差別を行ない、政府思想の元で何の疑いもなく殺人を行います。
<br />人間の弱さ、愚かさ、悲しさが浮き彫りになる中で、筆者の人間としてのすばらしさを感じられる本でした。
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<br />物に不自由しないこの日本の中では、どんどん心の豊かさが失われていっています。
<br />自分がこの世の中に「生」を受けて「生」を全うするまで、心を豊かに過ごして生きたいと感じた本でした。
自分ではどうしてもぬぐい去れない憎しみ、敵意、憤りに苦しんでいる方に、ぜひ読んでいただきたいです。
<br /> 以前、ルワンダの内乱による虐殺についてNHKスペシャルで取り上げていました。番組を見た後、人間があそこまで残虐になれるものかと、しばらく気分が落ち込みました。そこには希望も何も見出せませんでした。私がもしそこにいたらと想像すると本当に怖かったです。作者はそんな死と隣り合わせの息もつけないほどの恐怖の現実にさらされながら、どこまでも神に信頼し、必死に祈りました。彼女の祈りは、まさにキリストが求める祈りだと思いました。
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<br /> 「どうぞ、神様、私の心を開いてください。そして、どうしたら彼らを赦すことが出来るかお導きください。私は、私の憎しみを鎮められるほど強くはありません。私の憎しみは燃え上がって、私を押しつぶしてしまいそうです。
<br /> どうぞ、私の心に触れてください。どうしたら赦すことが出来るのか教えてください。
<br />私は、そのジレンマと何時間も戦い、次の日も一日じゅう、夜遅くまで祈り続けました。その次の日も、その次の日も、ずっと祈り続けました。食事もせず水も飲まないままで。」
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<br />私が最も感動した場面は、作者が母と兄を殺し、自分を死の恐怖に何度も陥れた殺人者を赦す場面です。
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<br /> 「私は、一歩進み出て、彼の手に軽く触れました。そして、そのことを言うためにここまで来たそのことを、静かに言いました。
<br /> 『あなたを赦します』
<br /> たちどころに、私の心は和みました。」
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<br />また、兄が殺人者たちに向かって最後に言った言葉に感動しました。
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<br /> 「『やってくれ!』と、彼は言いました。『何を待っているんだ、今日が、僕が神様のところに行く日なんだ。僕は、彼の存在を感じることが出来る。彼は僕を見守っている。僕を連れて行こうと待っているんだ。さあ、やってくれ。仕事を終わらせて僕を天国に送るんだ。
<br /> 僕は君たちが気の毒だ。まるで子どもの遊びのように人を殺している。殺人は遊びじゃない。君たちは神の怒りに触れて、代償を払わなければならないだろう。君たちが殺した罪もない人々の血は、君たちの後をついてくるだろう。
<br /> だけど、僕は君たちのために祈る。君たちが、自分たちのしていることの中に悪魔が宿っていることに気づき、神様に赦しを乞うように、手遅れにならないうちに』」
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<br /> イマキュレーさんの人柄の素晴らしさを伝えるためではありますが、訳者あとがきで輪廻転生について触れられています。聖書には輪廻転生の思想はありません。(念のため、カトリックの神父様、プロテスタントの牧師様に確認しました)