「もったいない」「どうせ勤まらないよ」「何か悪いことでもしたんじゃないの」などなど、公務員を辞職して、一般企業に就職しようとする人、した人は、必ずと言っていいぐらい、そんな偏見を持たれてしまう。しかし、そんな世間の偏見は、官尊民卑の旧弊的な価値観であり、公務員の抱える現状を知らない故の的はずれな批判である。
<br /> 私が、この本を手に取った動機は、自らが現職の公務員であり、消極的理由から転職を検討し、内定ももらって、退職を待つ身だからである。筆者が言うとおり、公務員としてお気楽天国に住んでいる人は、マレというべきかも知れない。私の奉職している職場など、いわゆる現場職。激務の極み、ストレスの宝庫、絶望的な虚無感が蔓延している。「煽るつもりはない」と筆者は付言しながらも、公務員という職業に潜むリスクを、解き明かしていく。なにより、現状の財政難から国家破産すれば、公務員の安定的地位など吹き飛んでしまうのだから。
<br /> ただ、惜しむらくは、筆者自身が1種エリートであり、積極的な動機で転職に成功しているせいか、前向き派の擁護に終始してしまっている感が否めない。公務員に限らず、転職志向の人々には、消極的ないしは絶望的な理由により転職せざるを得ない人もいるだろう。そういう人々にも、勇気を与えるような工夫をして欲しかった。
<br /> 本書のなかにも、資格による転職について考察する章があるが、なにもMBAや士業だけが資格ではない。税理士になることを考える前に、まず簿記3級を目指せばよいのだ。学生生活してても取れないような資格は、社会人が目指すべきではないと思う。いぶし銀的資格の研究もして欲しかったというのが、正直なところ。じゃっかん、雲の上の人の転職論か。
1年前までなら、こんな本は売れなかったでしょう。「公務員を辞める?頭が変になったのか?」で終わり。
<br />でも、夕張市の出来事を次はわが町なのではと危惧している人も多い。本気で町の再生を考えた時、有能な人材が流動的に官や民、研究機関(大学やシンクタンク)を行き来することで新しい価値を産み出していくことも視野に入れなければいけないのではないだろうか?
<br />タウンミーティングの問題も、それが仕事と言われていた節がある。私の関わった研究発表会などでも、事前に予想される質問の解答例をお知らせするのは研究のまとめとしての仕事という認識であった。どこで線引きをすべきかは永久の課題かもしれない。
<br />これが皆のためになる仕事なのだろうかと悩むより、成すべき事が見つかった人には、時代を開拓する仕事で大いに活躍して欲しいと思う。これは公務員に限らず、すべての人が生き甲斐を持って働き続けられる社会の構築にも一石を投じていると思う。
「役人廃業」というオビの言葉に、何となく惹かれて手に取った本です。
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<br />一番興味深かったエピソードは、もともと著者が公務員から民間に転じた際に専門にしたいと考えたこと(官から民への転職支援)が有って、正直にそれを志望動機として挙げたら、ことごとく面接に落ちてしまったこと。それで、敢えてその“志”は表面上の志望動機から封印した結果、見事に二社から内定獲得。そして、紆余曲折あった結果、最終的には、その“志”を実現するとともに、このように著書まで出すような成功を得た、ということです。
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<br />要するに、何が著者自身の転職を成功に導いたかと言えば、やはり“志”とそれを実現するための不断の努力だったわけで、たとえば公務員はコリゴリだから取り敢えず民間に転じてみるかといった、「何となく転職」ではなかったということです。
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<br />自身、何度も転職を繰り返した身としては、「何となく転職」や「思い付き転職」は決して良い結果をもたらすものではないことを、痛感しています。転職という大きなリスクを伴う局面においては、やはり戦略と、その実行に向け不断の努力をなす覚悟が必要不可欠であると思います。
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<br />この本、タイトルからは公務員の方の転職指南本かと思われるし、勿論その側面は強いわけですが、私のように民間一筋の人間にも十分参考になる内容でした。