新聞の広告をみて、手に取った。
<br />著者の田坂氏は日本総合研究所の創立メンバーとして著名。
<br />ビジネス一辺倒ではなく、思想色の濃い経営論、経済論が特徴で、
<br />ファンも多いと聞く。
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<br />本書はおそらく何かのセミナーをまとめたものだろう、
<br />10回に渡って田坂氏の仕事への考え方=仕事の思想を説いている。
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<br />なぜ我々は働くのか。
<br />この問い対する田坂氏の考えは以下のとおり。
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<br />一.仕事をするのは、生活の糧を得るためでもなければ、競争に勝つためでもない。
<br />二.仕事の真の報酬は、仕事を通して得られる「人間としての成長」である。
<br />三.仕事を通して成長する方法は二つある。
<br /> ひとつは、夢を持つこと。
<br /> もうひとつは、鏡をみること。自分の成長を映す鏡とは、上司であり、顧客である。
<br />四.成長のゴールは「人間力」の完成である。人間力は深い観察と格闘で養われる。
<br /> 深い観察とは、傍観者でなく、こころの痛みを知ること。
<br /> 格闘とはぶつかり合いを恐れず、相手のこころと正対すること。
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<br />通常のビジネス書は、問題解決の即効性に重きをおくため、
<br />個別の問題場面(たとえば折り合いの悪い上司との付き合い方、など)における 対処法、
<br />具体的テクニックを教える。
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<br />本書はしかし、個別の対処法ではなく普遍的な価値、思想を求める。
<br />ビジネス書でありながら、人生観、世界観を語っていて、宗教的香りが漂う。
<br />その点が類書ともっとも異なる点である。
<br />
<br />田坂氏は1951年生まれ、現在(2006年)55才。
<br />本書は1999年の初版だから、執筆当時は48才。すでにして大僧侶の趣、である。
人間と言うものを深く見つめ、格闘すること。
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<br />本気で語り本気で信じること。
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<br />人に求められるのは、
<br />実は念の強さではなく、無邪気さや純粋さ。
<br />自分の描く夢の実現を無邪気に信じることのできる力や、
<br />その実現をただひたすら純粋に祈ることの出来る力こそが求められる。
<br />これは天が与える稀有な能力である。
<br />
<br />人は単純な見方で他者を決めつけ裁いてしまっている。
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<br />反面教師とは内面教師 「内面省察の重要性」
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<br />組織の末端だからこそ見える世界がある。
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<br />人と価値観が衝突することを恐れている。
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<br />P182からの文章は頷ける。
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<br />自分も「永遠の一瞬」を創りあげる事を夢見たいし、
<br />たとえ自分の夢が実現できなくとも、
<br />いつか誰かがその夢を実現することを信じている。
<br />だからこそ愚直に進むことが出来ている。
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<br />
<br />
担っている役割の大きさと給料が合ってないなあ。
<br /> 求められる成果に応じた給料にしてほしいなあ。
<br /> 管理職になると責任が重くなるから、いやだな。給料も僅かばかりしか上がらないのでは、管理職になどなるものではないな。
<br /> 自分の周りにいた管理職は、勤務時間と責任と給料を考えると、割に合わない、と言っていたな。
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<br /> これまでの仕事の責任、報酬の考え方はこんなふうだったのです。
<br /> 本書を読んで、つかえがとれた気がしました。
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<br /> 特に、第七話「地位」です。
<br /> マネジャーを志望するということは、出世への階段を求めることでも、給料が上がるのを期待することでも、権力を誇示したいからでもない。義務と責任を求めてなるものである。
<br /> 義務と責任が仕事の働き甲斐につながり、ひとりの人間として大きく成長できるからだというのです。
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<br /> 仕事のリスクに責任を持つことによって成長できる
<br /> 部下の人生に責任を持つことによって成長できる
<br /> 部下が成長していく喜びと自分自身が成長していく喜び
<br /> マネジャーの地位につくから、自分自身が成長していかなければならない
<br /> 他人の人生に責任を持つ者が、もっとも成長できる
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<br /> こんな言葉に接すると、管理職も悪くないな、と思えるようになりました。管理職を志望するかどうかはともかく、もう少し自分が成長するために、夢を持ち目標を定めて働こうと思います。