ウィトゲンシュタインの「論理哲学論考」の訳者解説がわかりやすかったので、
<br />野矢氏の著作をいくつか適当に手にとってみた。そのなかの一冊である。
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<br />本書のテーマは「考える」ということそのものである。
<br />考えるというのは、いったい何をすることか。あらためて問われるとよくわからない。
<br />野矢氏は、次のようにいう。
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<br />■「考える」っていうのも、けっきょく、ぜんぜん心の状態や心の働きなんかじゃないんだ。頭の中で「思考」という作業をしているわけじゃない。P26
<br />■考えるっていうのは、耳を澄ますこと、研ぎ澄ますこと。P30
<br />■答えの候補があらわれたとき、いつでもそれを捕まえられるように「チューニング」している、ということ。P29
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<br />なんとなく、いい感じである。
<br />体裁もこの手の本としては相当変わっていて、半分はポエム調のイラストだし、
<br />文の調子もくだけていて語りおろし風である。
<br />小中学生向け、といってもいいかもしれない。
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<br />しかし、わかりやすさのために、なにかを犠牲にしているわけではない。
<br />抽象的で難解な哲学書と同等以上に、深く厳密に問題をとらえようとしている。
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<br />なにしろ、PHP文庫だし、ほのぼのイラストだし、癒し系には違いないが、
<br />なかなかどうして、みかけによらず、切れ味の鋭い本である。
<br />哲学とはそもそも何であったか、それをあらためて考えるきっかけになった。
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本全体にやさしさが溢れており読者は構えて読む必要は無いです。
<br />哲学者ならではの著者が「考える」を本当に楽しそうに語りかけ
<br />そして、読者もいつのまにか楽しくなってきます。
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<br />本のサイズは小さいので持ち運びも可能です。普段の生活の中で
<br />意外な所で意外な事を発見出来るようになりそうな感じの本です。
<br />老若男女問わずにおすすめです。
自分では当たり前だと思っていることをいざ説明するとなると言葉にデキナイという事は多くあると思う。
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<br />説明できないというのは結局分かっていないという事である。
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<br />考えるという行為もその一つではないか。
<br />いざ説明してみろと言われれば答える自信はない。
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<br />「考える」というものは何者なのかを著者が説明してくれる。
<br />とても面白く読むことができました。
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