教育者・キリスト教徒である新渡戸は、中国の孔子・孟子などの思想家や西欧の哲学者らの思想・言葉を引用しつつ、「騎士道」「キリスト教」と比較しながら、日本独自の精神としての「武士道」について論じている。その際、鍵語として挙げられているのは以下の通りで、中でも「義」を最も困難であるが最も重要な要素としている。
<br /> ・義−武士道の礎石
<br /> ・勇−勇気と忍耐
<br /> ・仁−慈悲の心
<br /> ・礼−仁・義を型として表す
<br /> ・誠−武士道に二言がない理由
<br /> ・名誉−命以上に大切な価値
<br /> ・忠義−武士は何のために生きるか
<br /> また、仏教や神道からの影響を指摘しつつ、その道徳的背景の中心として孔子による「儒教」を挙げ、さらに儒教の一派でもある陽明学の「知行合一」の思想に言及し、単なる知識ではなく行動を伴うことの重要性を説く。
<br /> 著者は武士道の起源を、12世紀末、源頼朝がおこした鎌倉幕府による封建制のはじまりに求めるが、実際に武士道なるものが確立されたのは、江戸幕府が支配体制を確立し、武士による合戦がなくなってからであるとも言われており、本書で言う「武士道」の内容を勘案すると、後者の方に説得力を感じてしまう。
<br /> また、武士道の終焉を1871年(明治3年)の廃藩置県、1876年(明治8年)の廃刀令に求める。騎士道は封建制の終焉によりキリスト教に受け継がれたのに対し、武士道は封建制の終焉により「いまにも消えそうな灯心」となってしまったと嘆きつつも、「大和魂」としてその精神は日本人の根底に受け継がれているとする。
武士道論はもちろんのこと。
<br /> 著者の新渡戸稲造が凄い。
<br /> 英検一級単語をらくらくと使いこなした完成度の高い英文。
<br /> あの時代の「知識人」とは、このレベルであったか・・。
<br /> と新渡戸稲造に驚愕の一冊です。
最近の日本の人たちは、自分が日本人であることを忘れている人が多いような気がします。日本人であれば、日本を愛し、日本について学ぶ必要があります。
<br />それまで、記録として残されていなかった武士道の精神を、文章にまとめ世界に広げようとした新渡戸稲造は素晴らしい人です。
<br />私は、武士道の精神は日本人として誇りに思いますが、「武士道」ではこれを美化しすぎている懸念もあります。そして、現代社会では受け入れられない部分もあります。
<br />ただ、日本には「武士道」という伝統精神があったことは、日本人として理解しておく必要があると思います。