今まで見たベイズ統計学の本の中でも傑出した出来。郡を抜いた分かりやすさで、さすが「入門」の名に恥じない本。ただ、敢えて難を言えば参考文献が一切書かれていない事。一つの章を終える毎に、その一つ一つを掘り下げようとしても、掘り下げようが無い。また数式に大胆な省略がなされているため、自分で式を導いていこうとしても途中で立ち往生になる事がある。その点からも、更なる専門文献を文中で紹介してもらいたかった。
ベイズ統計といえば、大学院生の頃、繁枡算男「ベイズ統計入門」東大出版会を読んで、手も足も出ず、心的外傷となって以来(繁枡先生ゴメンナサイ)なるべく近づかないようにしてきた。<br>そうはいっても、この分野で飯を食っていく以上、理解しない訳にはいかないので評判の良い本書を読んでみた。結果、わかりやすくて驚いた。章末の練習問題も理解を助けてくれる適切なものである。<br>ガンマ関数、ベータ関数、p.109(5.13)式の逆正弦変換、最終章の逆ウィッシャート分布、フィッシャーのZ変換を天下り式に認めてしまえば完全にベイズ統計が理解できるといっても言い過ぎではないだろう。<br>ガンマ関数、ベータ関数は常識としても、(5.13)式の出典、逆ウィッシャーと分布の解説などがあれば、私の心的外傷も完全治癒だったのだが、その点だけが残念である。
いつかベイズ統計学を勉強しようと思っていたが、なかなか時間が取れなかった。幸い、自然共役分布や尤度関数のベイズ推論における使用方法について調べる必要が生じて本書を買ったが、首尾一貫した丁寧な説明により最後まで読み終えることが出来た。特に平均値と分散が未知の正規分布からベイズ統計の手法を用いて、平均値の分布としてt分布が出てくる過程は感動ものだった。