以前、広島で4年ほど働いた経験がある。
<br />戦後(当時で)50年以上たち、すっかり大都会になった広島の町。
<br />しかしどこであれ、ほんの少し掘れば、傷つければ、
<br />「原爆」「被爆」という真っ赤な血が吹き出る
<br />
<br />そんな当時のことを思い出しながら、読んだ。
<br />というより、読んだら思い出さざるを得なかった。
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<br />「わかっているのは『死ねばいい』と誰かに思われたということ。
<br />思われたのに生き延びているということ。
<br />そして一番怖いのは
<br />あれ以来
<br />そう思われても仕方のない人間に自分がなってしまったことに、
<br />自分で時々気づいてしまうことだ。」
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<br />被爆体験を持つ多くの方から、
<br />このヒロインの言葉と同じようなことばを聴いた。
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<br />核兵器の本当の恐ろしさは、人間の心を、魂を蝕むこと。
<br />それを静かに伝えてくれる…そして、
<br />遠い道程であっても、きっとそこから立ち上がる、
<br />人間の魂の希望とを伝えてくれる佳品です。
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<br />※これで感動された方は、映画「父と暮らせば」も見ることをおすすめします。
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戦争から、やっとやってきた幸せの中に、
<br />戦争を誰も語りはしない状況で、
<br />どうしても戦争の記憶に引きずられてゆく感覚などを
<br />淡々と語っていて、
<br />悲しさやせつなさが伝わってくるものだった。
<br />そして戦争を通しての人の命というものを考えさせられました。
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<br />戦争が終わって、次の世代へ行くときも、
<br />原爆被害者のレッテルはきえていなくて、
<br />広島の人や場所をつらくかんじとってしまう主人公に、
<br />作者の片鱗を見ます。
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<br />桜の国の主人公は私を同じ歳なのですが、
<br />実際は今の30〜40歳頃の人の感覚じゃないんかとと思います。
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<br />被害者が加害者にのみこまれてしまいそうで、
<br />見ていて苦しい時もありましたが、
<br />最後まで憎しみの気持ちがあっても、
<br />幸せな仲間のことを考えている主人公が好きです。
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<br />始めて読んだときには、あまり深く読んでいないのに
<br />涙が出てきました。
<br />最近泣くことをあまりしていなかったので、
<br />うれしくもありました。
<br />感情に鈍感になっているからだったのでしょうか。
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<br />漫画はよく読みますが、異色の漫画だとは思いました。
終戦直後と現代を通じて、ある血族と広島・原爆との関わりを描く。形容が困難であり、読んでみて欲しいというしかないが、単にステレオタイプ的に戦争の悲惨さ、核兵器の残酷さを説くのではなく、原爆・原爆症に関わる当事者の、等身大の人間としての皮膚感覚を描き、だからこそ、いわゆる人間的という視点を持ち得たのではないかという印象がある。