警察小説で有名な横山氏でありますが、この作品は微妙。
<br />というのも無理やりオチに完結させられている感があります。ヒントのない、探偵小説を読んでいる気分です。
<br />こういった作品は賛否両論ですが、自分は好きではありません。
<br />推理小説ではない、といってしまえばそれまでかもしれませんが…“真相”というからには、それなりの伏線を用意してもいい気がします。
<br />それが無ければ、別にどんなオチにしても構わないわけで―読者にも意外性が無いです。
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<br />この作品はそうした部分が足りないと思います。
全5篇からなる短編集。横山秀夫を世に知らしめた警察絡みの短編集ではなく、ストーリーそのもの、事件の裏に隠された真相で最後にオトす短編集。画策、偽装し怯える主人公が自己崩壊していく過程が生々しく、痛々しい。全5篇中、個人的には『18番ホール』が秀逸か。
<br />相変わらずの横山節を堪能した。
どんな人生にも必ず陰があり、秘匿したい過去があるはず。
<br />そのような、いわば人間のダークな部分が世間に露呈していくことに対する
<br />不安や畏れといった主人公の内面が鮮やかに描かれています。
<br />精緻な描写により一気に読んでしまいました。
<br />テーマの重さから、読み終えた後はちょっとブルーになってしまいましたが、
<br />素晴らしい作品であることには変わりありません。