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| 澁澤龍彦の古寺巡礼
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澁澤 龍彦
澁澤 龍子
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テーマごとに澁澤龍彦の文章、龍子夫人の文章、あとは写真や記事を並べている。
<br />ファンであれば既に読んだ文章であっても「古寺巡礼」というテーマで、エッセイや小説を編集するというありそうでなかった企画にによって、澁澤の旅行者としての(当初旅行嫌いであったが)側面や、日本の風土と歴史を想うプロセスに光をあてており、興味深く再読できるだろう。
<br />博覧強記の澁澤龍彦が、西洋史と日本史を参縦横に論じるようすはファンならずとも興味深いもので、異端の文学者とされる澁澤が、実に正統な知識人であることが理解できる。
<br />寺の住職の歴史の質問に次々答え、生涯でただ一度「東京大学」と出身を名乗るシーンなど、龍子夫人の語るユーモラスなエピソードも本書に奥行きを与えている。
<br />澁澤ファン、古寺ファン双方に楽しめる一冊となっている。
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