ロシアでは知らない人がいないと言われるほど有名な作品ですが、日本ではまだまた知られていない作品です。
<br /> 著者のアルセーニエフが隊長を務めた辺境調査部隊のガイド役、デルスゥ・ウザーラの名前がそのまま題名になっています。
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<br />日記をそのまま作品にしたような作風の為、ストーリーとしては断片的な部分があったり、訳もやや古典的表現がありちょっと読みづらい箇所がありますが、作品としては臨場感があり読み応えのある作品です。
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<br />すでに失われつつある手つかずの自然が、まだ物語の中にはふんだんに存在し、自分も一緒にその場所にいるかのような感覚を味わえるのがこの作品の良いところです。
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<br />アルセーニエフより後の作家であるバイコフの作品と一緒に読むと、よりいっそう極東ロシアの自然が理解しやすくなると思います。
時は20世紀はじめ、ロシアでは近代化に押され、旧体制が崩壊せんとする時期だ。<br>著者アルセニーエフは軍務を帯びて沿海州に調査旅行に出かける。<br>その折に案内役を勤めたのが標題のデルスウ・ウザーラ氏である。<p>デルスウ氏は、沿海州を広く旅した経験をもち、また自然の中で生きる術を身に付けている。<br>足跡や焚き火の跡からまるで目で見たかのように状況を再現する能力や、観天望気の才、動物の様子から先の季節を予想することもできる。<br>これらはアボリジニやアメリカ原住民のような「霊的」な人種にしかできないことのようについ思ってしまうが、自然の中にひとが点在していた時代には、当然皆が持っていた力だったのだろう。<br>著者の自然科学に対する造詣も浅いものではないが、デルスウ氏にはかなわない。<p>景色が浮かぶような描写は訳者の腕に負う部分も多そう。<br>植物の記述など詳細にもズレがない。<br>これほどの本が一般に流布していないのが、不思議。←私が知らなかっただけ?<br>ナチュラリスト、山好き、冒険好きの方には特におすすめ。