著者によると、抗癌剤の奏功率とは、「癌の大きさが画像上二分の一以下になったのが4週間以上継続する患者の率」です。現在抗癌剤の効果はこの奏功率で評価されています。ところが、この奏功率と患者の生存期間が比例しないと著者は言います。その理由は免疫機能を抗癌剤が破壊してしまうからだろうと著者は考えています。そこから、免疫機能を破壊しない程度の少量の抗癌剤を投与するという著者のやり方が出てきます。実際抗癌剤で小さくなった腫瘍が、また増大を始めると以前よりさらに速度が速くなります。はたして延命効果があったのかと思います。著者のような投与法をする人は少ないため、まだいわゆるエビデンスが十分でありません。しかし著者の主張は理屈から言って、十分に納得できるものです。抗癌剤の投与を医者から勧められている人は一読すべきでしょう。
この手の本はかなり読んだが、言えることは、何々博士などという称号はそれを表に出すこと自体がかなりいかがわしい内容のことが多い。私も自然科学をかじった博士なのであるが、記載内容について科学的検証がほとんどなされていない。したがって健康食品販売促進のための治癒体験本との違いを見いだすことができない。冷静によく読めばわかるのであるが長生きできるというような話ではなくて、延命できるかもしれない、という程度のものである。癌は自然治癒もあるということを考えると、いわゆる標準的化学療法の平均的経過よりも結果として長生きしたとしても不思議ではなく、必ずしも嘘八百ではないところが作者の巧妙なところかもしれない。辛口のレビューとなったが各所にうなずける部分はあり、健康のこと、死生観など見直すのには役立つ本かもしれない。
抗癌剤治療における現状への批判と、著者が行う抗癌剤治療の実際が書かれている。
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<br />著者が行う抗癌剤治療は、癌の征服よりも、癌との共存を目指すかのような治療である。
<br />しかし、治療を受けるがわからしたら、どのみち治らないのであれば、癌の縮小を治療の目標にされるよりも、少しでも健康に生きられる時間が延長してくれたほうがよいに決まっている。
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<br />現在の標準的な抗癌剤治療の弊害は、患者ではなく病気に目を向けて医療を行う現代医学の弊害そのものだと思った。
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<br />それからこの本には、ちょっと前に読んだ、「抗癌剤」という本で、平岩氏が述べている抗癌剤治療の方法と似ていると思うところがたくさんあった。
<br />両者の行う治療は、
<br />標準的な抗癌剤の治療法にこだわることなく、患者に合わせて抗癌剤の種類や量の選択を綿密に行う、
<br />という部分で同じだと思う。
<br />一方異なる部分は、
<br />梅澤氏は平岩氏よりも少ない量の抗癌剤による治療にこだわっているようだということと、
<br />梅澤氏は、患者本人の免疫力を増強させることも治療の一部に取り入れている、ということだと思う。
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<br />著者らが述べることには、賛否の分かれる部分もあるのかもしれないが、
<br />私が癌になって抗癌剤治療を行はなければならなくなったときには、
<br />標準的な抗癌剤治療よりも、梅澤氏や平岩氏が提唱する方法を望むだろうと思う。