この物語はプテラノドンの子の独り立ちのお話だなと思います。
<br />父親と母親が卵から大切に育てたわが子。父は強く生きていく術を教え、母は困っている人にはだれにでもやさしくと教える。言葉だけでなく、ちゃんと親の行動にもその教えが示されています。そして、まだとべないのに、あとは自分でがんばるしかないんだと、泣きながらわが子から離れていくんです。結婚しても子離れ、親離れができない現代の親子のあり方についてもちょっと考えさせられます。
<br />プテラノドンの子は、何かあるたびに父母の教えを思い出しながら、自分の足で生きる道を歩んでいきます。勇気があって、頑張りやさんです。この先何があっても大丈夫と感じさせてくれます。
<br />ティラノサウルスは今回は脇役ですが、ちょっといいやつです。読んだ後に寂しさを感じさせてくれることで、存在感が際立ちます。
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これは恐竜版 ごんぎつね といってもいいですネ。
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<br />本来なら出会うはずのない2人の間に、生まれかけた心のつながり。
<br />しかし、お互いに理解することのないまま、悲しい結末を迎える点で
<br />相通ずるものを感じ、目頭がジーンとなりました。
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<br />本書で出会うのは、ティラノサウルスとプテラノドンの子供。
<br />目が見えなくなったティラノサウルスは、なんとかしてプテラノドンに
<br />助けられたお礼をしようとするのですが…
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<br />ヒーローや怪獣をコミカルに描かせたら右に出る者のいない宮西さん
<br />ならでのキャラ設定で、重くなりがちなテーマも軽やかに描かれています。
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<br />ボクの推測ですが、ラストでティラノサウルスが子供を食べるか否かは、
<br />ひとつの悩みどころだったと思います。
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<br />ごんぎつね のラストでは、銃口が火を噴きました。
<br />さて、本作では?
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<br />ラストページの星空が思わず霞んで見えました。
大事に大事に慈しみ育てた子の元を、泣きながら去るプテラノドンのお父さんとお母さん。泣き疲れて寝てしまうほど悲しんでも、お父さんとお母さんから学んだことを覚えて、健気に生きていくプテラノドンの子。ティラノサウルスと出会って、友情が芽生えていたのに悲しい結末。5歳半の息子と2人で泣きました。お薦めの1冊です。