著者名から,最近流行の埋もれていた未訳傑作の発掘と思いきや,何と原書の刊行は1994年,新作と呼ぶにはやや無理があるが,何故すぐに邦訳されなかったのか不思議なほど上質のミステリー。
<br /> 事故で一線を退かざるを得なかった失意の奇術師のまえで繰り広げられる騙しあいと腹の探り合い。終盤からのどんでんがえしの,あざといほどのたたみかけ方は,執筆時70歳近かった著者の年齢を感じさせない。
<br /> これまで「地球最後の男」「地獄の家」(共にハヤカワ文庫NV)など長編は何か物足りなさが残り,やはり「13のショック」(早川書房刊)に代表される短編作家というイメージが強かったのだが,この1冊で新境地を開拓したのではないか。
<br /> これだけのものが,いきなり文庫本で刊行ということで,コストパフォーマンスも5つ星。
昔はよく見た名前だが、最近はあまりお目にかかれなかったマシスンの長編。ホラー作家のイメージが強いが、純粋なミステリの紹介は珍しいかも。とにかく設定が凝っている。タイトルどおり、舞台はたった一部屋だけで、登場人物も全部で5人だけ。ほんとに舞台劇みたいだが、この限定された状況で、考えられる限りのドンデン返しを見せてくれるあたりは、さすがに巨匠。ただ、主人公(語り手)が植物人間だという設定が、もうちょっと活かされていればなぁ…
物語は車椅子の上の、自分で動かせるのは目だけと言う老奇術師が見たままに語られます。
<br />舞台はマジックルームと呼ばれる、奇術の小道具や仕掛けでいっぱいの書斎。
<br />この限られた空間での目まぐるしい展開、
<br />どんでん返しの連続に息をする間もないほどです。
<br />バカミスの範疇に入るのかもしれませんが、私自身はバカミスが嫌いではないし、
<br />これでもかとばかりに読者を騙そうとするサービスぶりにどっぷり浸れました。
<br />イリュージョンの舞台を見るような感覚で読んで欲しい本です。
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