この本と著者の吉田太一さんを知ったのはTBSラジオ「久米宏のラジオなんですけど」で吉田さんご本人がゲストで出演されていてトークを聴いていたのがきっかけでした。
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<br />やはり一番苦労された点は「いかに死臭を克服するか」というもので、本からひしひしと伝わってきます。一番の身内である遺族の方でさえも忌避するくらいなのですから尚更の事なのでしょう。遺品整理といってもその仕事の内実は「単なる片付け屋さん」では無く「普通の人がやりたくない事をやる片付け屋さん」と言えます。
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<br />そんな中、吉田さんはこの仕事の使命と誇りを持っていて、仕事といえど日々格闘している吉田さんの実直さを感じました。恐らく「自分がやらなきゃ誰がやる」という信念を持っていらっしゃるのではないでしょうか。
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<br />ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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筆者のブログのたくさんのエピソードから選りすぐられ、加筆された作品。人間の死に際の記録場面集とも言える。殺人現場の無念、無惨。孤独死の絶望。遺産をめぐる親族の確執。変死後の不気味、異様…。死の床の光景が、それまでの生を生々しく語る。主人公である遺体の不在ゆえ、関係者は赤裸々に本音をむき出す。
<br /> しかし死臭のたちこめる各部屋を、筆者は感情を抑えて淡々と描写する。遺族への悪口にならず、その混乱を思いやり、(おそらくはまれな)誠実をみせる人たちの姿をたたえる。
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<br /> 最近病気の母を亡くし、少し落ち込んでいた。だが、相応の葬式代を貯めて逝った母や、最後の日まで父が添い寝した臨終は、そう悪くはなかったのかもしれないと、本書を読んで思った。
「遺品整理屋」。本書で初めてお目に掛かった言葉である。主に高齢で一人住まいの老人が突然死した場合の「遺品」を整理する職業である。遺品と言ってもアルバム等の綺麗事ではない。死体そのものが主な対象である。本書では著者が経験した46の実例を冷徹に描写している。
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<br />腐乱した死体、悪臭、汚物、場合によっては死体に湧くうじ虫。孤独死の現実をマザマザと見せ付けてくれる。また、そうした孤独死に伴う人間関係についても描かれている。著者は本書中で解決策を示したりはしない。ただ、死が発見されるまで一日以内なら綺麗に片付けられると言う。ほとんどの場合、孤独死する方に係累がいない訳ではない。それなのに何日も死が発見されない現実には慄然とせざるを得ない。現代社会における家族関係、人間関係に対する警鐘である。
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<br />そういう私にも田舎に70才を越す母がいて一人で暮らしている。幸いにも、私の田舎では"近所付き合い"という習慣が残っていて、近所の方が毎日のように母の所へ寄ってくれる。そんな状況に甘えて連絡もあまり取らない私だが、今後電話する回数を増やそう。題名は市原悦子を思わせて悪趣味だが、内容は重い問題を提起する良書。