日本社会における格差が最近、話題である。といったわけで、本書を手にした。
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<br /> 格差を話題にする本書は、両極端に位置する人々の現状について語る。特に、貧困層・困窮者の話題が多く読んでいて暗い気持ちになることも多かった。
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<br /> しかし、どのような対策を講じるべきかの提言や、海外の格差解消の取り組みも紹介されており、非常に参考になった。特に、正社員とパートや派遣社員との間に給与差別や待遇差別を認めないオランダの法制は有効な対策ではないだろうか。
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<br /> いざなぎ景気を超える景気拡大ということが言われるが、それは非正社員や非熟練労働者に荷重の負担を強いた結果であることがよく分かる。不当に長時間・低賃金で働かされている彼らは本当に疲弊し切っている。
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<br /> 彼らを踏みつぶして、その上に成り立つ景気回復。一部の上位企業だけの業績が上がっただけの経済成長には疑問が生じる。
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<br /> 新聞の連載記事を元にした本書は、文章も読みやすく、豊富な事例に満ちており、大変おすすめである。
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<br /> 本書の一部表記に誤りがあったが、それもそれほどに気にはならない。
「規制緩和は雇用を創出した。パートと無職とどちらがいいか?」格差容認派の典型的なコメントとしての宮内義彦の言葉である。この問いには「多くの人々がパートか無職かどちらかしか選べない社会を望んでいるとは思えない」と突っ込みたいところだが、本書での宮内へのインタビューはそんな応酬とはなっていない。このあたりに象徴される一抹のくいたりなさがあるし、海外の事例取材も背景の事情がわかりづらく、やや表面的なきらいがある。ただ格差の底辺だけでなく、上澄み部分としての富裕層や、源流ともいえる規制改革の経緯にも言及し全体像を浮かび上がらせているところは気の利いた構成といえるだろう。