私が読んだのは今から37年前です。加藤文太郎の死後、手記が遺稿集刊行会から刊行されたのが昭和11年8月でした。その偉業が世間に認識され、昭和16年に軍事保護法により内容の一部削除を経て公刊されました。何故かその貴重な本が私が通う区立中学校の図書館にありました。少し山登りに興味があった私はそれを読み、今も山登りを趣味とする心情的バイブルとなりました。その時代は登山道はなくルートを探す登山でしたが、私はそれを忠実に守らんと八ヶ岳を岩稜通しに行き、死ぬ思いをしたのを懐かしく思い出します。今とは比べもの成らない程のアプローチをスキーを駆使し、驚異的な体力とスピードで山行を重ねた紀行は自らの経験が増す程、敬服します。小説には小説の良さがあるのでしょうが、先にこちらをお読みになることをお勧めします。
たくさんの登山記録が残されており、その健脚ぶりに、ただただ感心するばかりでした。<br>私は、加藤文太郎さんをモデルにして書かれた「孤高の人」を読んで彼に興味を持ちました。彼はどうして遭難して帰らぬ人になってしまったのか、気になって仕方がありませんでした。「孤高の人」の主人公の彼は少し人間離れしているように思えたのです。<p>この本を読んで、彼を実際に生きていた人間として捉えることができました。<br>この本は登山をしない人にはぴんと来ない内容が多いかもしれません。<p>私も地理的に良くわからないところが多く、何箇所かは飛ばして読んでしまいました。・・が登山を趣味とし、彼の足跡をたどろうという方には本当におすすめできる本だと思います。彼の書いた文章、思いがつづられ�!��!!��章は、まさに彼の肉声という気がしました。
新田次郎の『孤高の人』で知られる加藤だが、彼の真実は、彼自身によって語られた言葉にのみ残されている。彼が死した理由も、そこに全て記されている。小説はあくまで小説に過ぎない。真実がどれだけ温かい物か、絶対的に間違った小説を鵜呑みにしないためにも、山を登る人、自然を好む人に、彼の真実を知って欲しい。