論文の書き方になぞって、ものの考え方・見方をきっちり学ぶことができます。基本的なものの考え方ができていないと、論文は書けない、ということでしょう。知識が増えても混乱しないのは知識の相互・構造関係を把握しているため、アイデアには刺激と整理が必要、本質は何かを常に考える、言葉を大切に使う、など一般的な仕事や社会生活に関わる洞察の仕方・態度も学ぶことができます。<p>内容は、①テーマ探し(探索量と範囲で。テーマは「不思議で」「面白い」ものを。具体的なトピックは狭く、しかしどんな広がりを持ちうるかということについては大きく考える。テーマ探しには何段階か必要。うろうろプロセスが必ずある。入り口は狭くても奥行きのある、より本質につながっていることがポイント。思考実験を繰り返す。不思議と思ったことに論理を繰り返す。)<br>②仮説と証拠提示(理論を現実に無理に当てはめようとしないこと。分析対象のレベルはあわせるべき。仮説の萌芽アイデアは現実の不思議を見る目から。現実のまとめ方・証拠の提出の仕方は、データ・厚い記述・論理の三つ。論理的に当たり前のことがおきていないか、なぜを三度問う。)<br>③書き方(「プロは舞台裏を見せるな」結論は三行で。とにかく書く-つながりが悪いところは論理が飛んでいる、後から直せば良い)<br>④止めを打つ(結論は政策的・理論的・現実解釈論をいう。オーバージェネラリゼーションは不可。自分のやったことを広い地図の中で位置づけ終わる)<br>といったようなもの。要は、広い視野で、具体的なテーマを論理と現実を大切に本質に迫ること。論文が書きたくなります。
職人、プロとしての論文への意識が詰め込まれています。<br>論文というアウトプットの質を高めるための本質的思考が、広く深く追求されています。<br>プリント形式でまとめられた巻末付録も、本書の議論を俯瞰し、エッセンスを忘れないようにする上で有用です。<br>より高みを目指す人はもちろん、高みに憧れを抱くためだけにも、是非。
他の方も書いていらっしゃいますが、たとえば大学生がはじめて論文を書く、というときに手をとってどうになる本じゃないでしょう。<p>ただ、一度でも社会科学系の論文を書く、という作業で苦い経験をした人であれば、本書の中でなされている対談などで語られていることは、本当に「あー、そうだよなー。わかるわかる。ほんとにそうなんだよねー。」と思わずうなづいてしまいたくなるような話がたくさんでてきていて、自分の中にあるもやもやを見事に言語化してくれる感じです。<p>過去に、そして今、論文のことで悩んでいる人は是非。