妖怪でなくても良かったのではないだろうか?とも思いましたが、そこがスパイスになっているんだろうか。全体的に重い話ではあるけれども、その文学少女のいっぱいいっぱいな語りが妙に好感が持てたり。残る謎はかなり多いですが、面白いキャラクタに出会えたなと思える1冊でした。
客観的に見れば、星3つか4つくらいです。
<br />しかし私個人としてはすごく面白く感じたので、星5つです。
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<br />この巻は太宰治の作品をもとに話が作られています。
<br />作中で「太宰は好き嫌いがわかれる作家で」と書かれていますが、この作品自体も好き嫌いがわかれやすい要素を含んでいます。偶然の一致かもしれませんが、「そこまで踏襲するとは」と思わされました。
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<br />ストーリーは最初コメディっぽい感じですが、後半にかけてシリアス度が高くなっていきます。
<br />謎が何段階も重なって、ぐいぐい惹き込まれます。(ただし人によっては展開が見え見えかもしれません)
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<br />作中では登場人物が長い台詞を一気に喋る場面が多くあります。その中の数カ所では、テンポをもう少し調整したほうがいいように感じました。しかし基本的にはテンポも良いし丁寧に書かれた文章だと思います。
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<br />個人的なオススメは、クライマックスあたりの遠子先輩の説得シーンです。
<br />(人によって感じ方が大きく変わり、私とは逆にしらけてしまう可能性があるでしょうが)
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<br />――それは現実世界を文学世界で例えた解説。
<br />――それはとても正しく世界を表現した解説。
<br />――それはとてもとても馬鹿馬鹿しい説得。
<br />――そしてそれでこそ“文学少女”が本当に真剣に行ったといえる説得。
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<br />私はその説得に対し、掛け値無しの賛辞を送りたいです。
<br />変人にしか納得できない、変人の全身全霊に。
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<br />そのシーンを読んで私は、本当に心踊りました。
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<br />後いくつかポイントを挙げますと、挿絵がキレイ系、遠子先輩が可愛い、心葉の過去とこれからが気になる、あざといツンデレ娘が報われそうな気がしない、等でしょうか。
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<br />人を選ぶ作品だとは思いますが、一人でも多くの人にこの本を取ってみて欲しいです。
本を食べる妖怪、ではなく自称"文学少女"の天野遠子。<br />元天才美少女作家の井上ミウこと井上心葉(男)<br />この二人を主軸にして話が展開されます。<br />序盤はコメディ色が強く、ありがちな学園コメディ物なのかな?と思いましたが、中盤から終盤に掛けては謎解きや人間の感情が絡み合うシリアスなムードが漂う作品になっていました。<br />しかし、シリアスといっても救い様がないほど暗いわけではなく、ちゃんとした着地点も用意されていて好感が持てましたね。<br />表情豊かな遠子先輩に振り回される心葉君も見ていて微笑ましかったです。<br />私的に見所は最後の説得ですね。遠子先輩が文学少女たる所以が分かるはずですので。<br />文学少女風に感想を言えば、「熟成されたワインの様にほどよい渋みと仄かな甘みを含んだ作品」といった所でしょうか。