日本の電機業界の現状、課題、今後の方向性についてよくまとまっており、エレキに携わる人、金融関係の人には一読の価値があると思う。まだ競争力がある今のうちに水平に同じ商品(携帯電話、半導体等)を作っている日本企業同士で合併して、グローバルトップワン企業を作るべきだという筆者の主張には大いに共感できる。しかし、現実は思うようには進んでおらず(NEC、松下の携帯事業は技術提携に終わっており、また半導体の共同ファブも失敗)、集中と選択が徹底されている海外に比べると筆者が危惧するように日本企業は取り残されてしまうのではないかと不安になる。明治時代の黒船来航のように実際にどこか1社が海外企業に半ば無理やり買収されてしまうという事態が起きて初めて本書の合従連衡は真剣に当事者同士で検討されるのかもしれない。
日本の電気機器メーカーは、日本の狭い市場で過当競争をやっているため利益率が低い。「総合」を捨てて、合併によって事業ごとのシェアを上げていかないと、外資に買収されちゃうぞ、という話です。前半の三分の二くらいは同じことの繰り返しです。まあそれはそのとおりなのかもしれませんが、「そもそも日立が外資に買収されたとして我々にとって何か問題でも?」といった素朴な疑問や、「いろんなメーカーのいろんなデザインの商品が次々と出て、しかも新製品があっという間に値崩れする日本とは、消費者にとっては世界で最も理想的な市場であるよなぁ(外人のケータイはカッコ悪いし)」といった視点は、とりあえず無視されています。電気機器メーカーにお勤めの方か、株をやっている人にはよいかもしれません。
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2007年5月より会社法の施行により、外国企業が株式交換により日本企業を外国企業の子会社にすることが可能になる。このことは、外国企業による本格的な日本企業の買収劇が始まることを示唆している。
<br /> 一般的に、買収が行われる際には、買収される側の企業の価値、すなわち、時価総額が低ければ、それだけ低い対価で買収することが出来る。
<br /> 日本の大手電機の収益性を見てみると、外国企業と比較しても低い水準であり、そのため、株価が伸び悩み、結果として低い時価総額となっており、外国企業からM&Aの対象としてねらわれやすくなる恐れがある。
<br /> 本書は、現状の大手電機の状況を各産業ごとにデータで根拠付けて分析し、外国企業との競争に打ち勝つために、日本の大手電機がどうあるべきか提言している。
<br /> 筆者の提言は、的を得ており、示唆に富んでいるが、一方で、現実レベルまで落とし込むという作業が欠如している感はある。
<br /> しかし、現状の日本・そして世界の電機業界が産業別にどうなっているのか分かりやすく書かれており、非常に勉強になる。一読の価値のある本である。
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