4章までは、第二次大戦での潜水艦作戦の潜水艦研究。
<br />日本海軍潜水艦作戦の失敗の原因分析が主。1章で最初に潜水艦なるものを分析しているのは、かつてない手法。そのために戦闘力を定義しているが、軍艦と言うものがここでよく理解できる。
<br />その上で、2章で最適用法を提案、これが仮説であろう。
<br />実際の作戦を事実に基づいて、作戦態様(艦隊協力、潜水艦独自、母潜任務など)別に整理、評価。3章この部分はかなり複雑だが、よく整理してあるし、巻末に一覧表までつけるサービス。こういう表を作るのは大変だ。
<br />4章で失敗原因を分析。この分析もかなりユニーク。5つの原因のうち、最初の艦隊決戦主義は定番としても、民族性などは秀逸。
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<br />5章は、別の本でいい。防衛庁省昇格の時期、こういう問題を解決するのが先決ではないか。
全然軍事オタクじゃなくて、只今勉強中の者ですが・・・いい文章です。この手の本にはめずらしく最後までスイスイ読めました。著者の「作家」としての力量に感謝します。「潜水艦」は「騎兵」と同じく運用に戦術の天才を要するのかも知れませんね。
教科書ですね。潜水艦だけでなく、海軍や軍事についても懇切丁寧な解説です。民間の研究者では、どんなに資料を駆使してもどうしてもピントが外れるところがありますが、実際に潜水艦を指揮した人ならではのツボを感じます。
<br />潜水艦ものは、性能やら歴史やらのデータと、どこからか転載した図面や写真のものばかりで、ほんとの性質や使い方について書かれたものはありません。例えば最高速力20ノットと23ノットの差が実戦で意味があるのか、そんな分析はありませんでした。エンジンの型や魚雷発射管の数を並べ立てても、その意味が分からないと意味がありませんが、性能を数字でなく定性的な価値から徹底して論じている視点は、新鮮です。
<br />潜水艦の能力分析に、戦闘力の要素を定義している点も、独創的で堅実だと感じました。軍艦というものが改めて復習できた気がします。
<br />付録が結構値打ちがあります。海軍の定義だけでなく、著者の研究成果が分かりやすく説明されていて、用語集を読むだけでも軍事知識がつきます。
<br />この種のものは、海軍で実戦経験のある人のものが絶えたら、もう出ないでしょう。3章が退屈という書評もありますが、複雑な日本海軍潜水艦の作戦全般をこれほど要領よく、かつ正確にまとめたものは見たことがありません。それに、2章での著者の仮説と4章の分析の根拠として3章の位置があるのですから、これを省略せずにまとめなおした著者の研究者としての姿勢には敬意を表します。
<br />4章まででも戦史研究の成果としては完成していますが、5章で海上自衛隊の現状に触れざるを得なかったというのも、元自衛官の著者の良心でしょう。分析の視点が独特でコロンブスの卵ではありませんが、眼からうろこが落ちる思いです。
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