定番の「〜のすべて」なので、スカイラインファン、スカイライン購入検討者は買っておいて損はないでしょう。
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<br />しかし、スカイラインというスポーツ性が高く、数々の新機構も採用されている車種でありながら、メカの解説はお粗末。インターネットが発達した今、この程度の情報はネットで入手できます。
近年の「すべて」シリーズに言える事であるが、「メカニズム解説」の内容が浅く、読み応えが無い。
<br />例えば、新型VQはカムが直打式に変わってあるが、その理由をフリクション低下のためとしか書いていない。確かに新しい技術を採用して直打式も取り入れているのだが、何故それを採用しなければならなかったか明確でない。フリクションの低下だけでは無いはずだ。前書きにVQエンジンの目標に触れているだけで非常に不親切な解説である。しかも直打式のエンジンはこれまで日産は造ってきたが、それらとどう技術的/構造的に違うのか?。何故、その技術が必要だったのか?。筆者はもっと「歴史」を学ぶべきだ。
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<br />また、ボディの解説は、ただの部位の紹介である。日産の発表会パンフをそのまま記事にしたような内容だ。ここのコンテンツの筆者は、技術に対してそれを採用した日産の事情と技術のバックボーンを良く理解していないのではないか?と疑問を抱く発言もある。例えば「R34からV35にモデルチェンジして〜中略〜(丸テールの廃止、直6の廃止の)批判はファンの勝手な思い込みの産物に過ぎない」と発言している。それでは、何故V35のマイナーチェンジで丸テールが復活したのか?V35はファンの声を無視した結果、国内で販売的に成功したといえるか?このコンテンツの筆者、安藤氏に是非問いたい。
<br />V35もV36もそうであるが、日産に国内専用のFRプラットフォームを造る余裕があったのか?。そんな中、スカイラインという名を残す為にどうしたらいいのか?。日産内では様々な議論があったはずだ。そういう背景で開発された技術を、もっと深く読み取って解説すべきだ。
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<br />これまでの星島浩さんの「メカニズム解説」は、会社の背景もクルマを取り巻く環境も熟知しており、何故その技術を採用したか?、その狙いを大局的な視点から明確に解説していた。「なるほど」といつも感銘しながら読んでいたものである。
<br />それを知っているだけに、最近の「メカニズム解説」の内容劣化は非常に残念である。
モデルチェンジする度に話題となるスカイラインが遂にV36へとモデルチェンジされた。
<br />今度もまたアメリカの方を向いて大型化されているのが少々残念ではあるが、CMタレントに渡辺謙とイチローという、アメリカでウケている二人を起用したのは意味深であるのを感じるのは愚生だけか?
<br />さて、こちらの「新型スカイラインのすべて」は、値段とその厚みと比べて実に割安に出来ているのは好感が持てる。毎度のライバル車比較と試乗、それからメカニズムとそこまでに至るデザイン紹介などと巻末の縮刷カタログは勿論、歴史のある車種だけに歴代スカイラインをスペック付きで紹介しているのは親切だ。(よく考えれば)歴代と比較しても全く別モノなのであまり意味は無いのだけども、我々スカイラインを応援しているファンからすれば嬉しいところである。実際に書店には数種類の新型スカイラインの特集本が並んでいたが、このシリーズがやはり一番だと思う。
<br />ただスカイラインという歴史あるクルマなのだから、もう少し高くても目をつぶるから、厚みをもう少し増やして欲しい。そうすればもっと輝く本になるだろう。また、もっと新型スカイラインを「買いたい!」と思う人は増えると思う。