骨太の1冊です。「楽しみ」や「自己啓発」に興味を持つ
<br />普通の人に、本書をお勧めできるか、または気軽に受け入れ
<br />られるかは、甚だ疑問です。専門書としては、いろんな側面
<br />から「楽しみ/喜び」にいて研究された内容が記載されている
<br />ので、多分素晴らしいものなんだろうと思います。
<br />
<br /> 本書が伝えている
<br />「楽しみが生じるためには、自己目的的な自己を持つこと」
<br />つまり…
<br /> 目標設定の重要性
<br /> 注意を集中させること
<br /> 意識を統制し、自分をコントロールすること
<br />
<br /> をもう少し分りやすく、楽しく伝えていれば間違いなく、
<br />☆5つだと思うのですが。少し残念です。
私はコンサルタントとして、
<br />人がどのように自ら幸せをつかむことができるか、という観点で、
<br />様々な企業・人材に接し、また様々な分野の書籍・論文を読んできました。
<br />本書は、これらの経験を統合してくれるだけの力をもっています。
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<br />まず、自己啓発の書として最高のものです。
<br />スティーブン・コビーの「7つの習慣」を上回ります。
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<br />次に、経営書としても最高のものです。
<br />人のモチベーションを如何に高めるか、ということについて、
<br />外発的誘引、内発的誘引を様々な角度で解説した良書が沢山ありますが、
<br />本書は最も深く、かつ実現可能な方法でモチベーションを説明しています。
<br />
<br />更に、人間科学書としても最高のものです。
<br />初版が1990年と古いにもかかわらず、
<br />現在の最新の自然科学と整合しています。
<br />進化理論を前提として捉え(リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」など)、
<br />人が進化の過程で如何なる能力を獲得してきたかを踏まえ(スティーブン・ピンカー「人間の本性を考える」など)、
<br />人の脳が如何なる働きをするかを適切に理解し(アントニオ・ダマシオ「感じる脳」など)、
<br />人がよりよく生きるためにどう考えるのかを整理し(ダニエル・デネット「自由は進化する」など)、
<br />歴史・文化・社会・組織と個人との関係のありかたを模索し(ジェイムス・C・デイヴィス「人間ものがたり」など)、
<br />宇宙と個人との関係まで統合しようとしています(N・D・タイソン「宇宙 起源をめぐる140億年の旅」など)。
<br />
<br />人という視点で、
<br />自然科学・社会科学の知見を見事に統合したものは本書以外に知りません。
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<br />更に、西洋と東洋の表面的な文化の違いの奥に隠された
<br />共通事項まであぶりだしています(フロー理論=荘子)。
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<br />本書を読んでおかないと人生損します。
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<br />私のなかでは、本書は知識の中核的な位置付けになりました。
チクセントミハイは、本書が論じる「フロー体験」という概念を提出/研究したことで世界的に有名な社会学者(心理学者?)。<p> ある種の条件化で、人間が喜び・楽しみを感じるということを発見し、その条件化で発生する体験のことを「フロー体験」と名づけた。<br> 提出されている概念、およびその条件は興味深く、「楽しみ」という扱いにくい概念を独自の概念をもとに実証研究的な形で仕上げた、ということだけでも価値ある研究と言えると思います。<br> 統計的な調査の確かさとかは、私にはいまひとつきちんと判断することができませんが世界的にも評価されているようなので、多分それなりのなのでしょう。<br><br> ただ、宣伝のつもりなのか、本気なのかわかりませんが、フロー体験という現象を解明できれば、功利主義の効用測定の問題だろうがなんだろうが、快感とかに関わる問題が万事解決! というような素朴さはいただけません。