■「知ること」が、世界を変えるためのささやかだけれど大切な一歩。
<br /> 世界の矛盾の多くは、
<br /> 富める先進国と貧しい途上国との不平等に起因している。
<br /> そんな思いで、紹介されている50の事実。
<br /> あとがきで、訳者がこうコメントしています。
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<br /> 「知らない」ということは罪深い。
<br /> 知らずにすませていることが、声なき人々の細い叫びを聞き逃し、
<br /> 自らの快適な暮らしの付けを他者に押しつけ、
<br /> 期せずして他者を収奪する結果を招くことになるからだ。
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<br />■私たちが愛用している携帯電話やパソコンを作るために必要な希少原料が、
<br /> 「アフリカの世界戦争」の火種になっていたとは、
<br /> 訳者同様、私もつゆ知らず、不明を恥じるばかりです。
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<br /> ・米国の防衛費(約3960億ドル)は、「ならず者国家」の防衛費の33倍
<br /> ・米国は国連に対し、10億ドル以上の未払い金がある
<br /> こんな二つの事実を重ねあせてみると、
<br /> なぜ米国の防衛費の一部を国連負担金の未払い処理に回せないのかと、
<br /> 憤らずにはいられなくなります。
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<br />■読み終えると、何かしなければ・・・との思いが内に湧いてきます。
<br /> 一人でも多く、また子供たちにもぜひ読んで欲しい一冊です。
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星の数はこの草思社版訳書に対するものである。この書は世界の現状を把握するきっかけ、あるいは入り口として、極めて優れた書である。中高生にこそ、是非とも読んでもらいたい。しかし、この訳書はあまり良くない。たとえば、「2 肥満の人の三人に一人は発展途上国に住んでいる」の17頁5-6行に「もはや致命的な肥満への処方箋というほかない。」とある。ところが原文は ”it’s a lethal prescription.” だけであり、「(sedentary lifestyles=坐業ばかりの生活習慣は)死をもたらす処方薬である。」くらいの意味である。「もはや……というほかない」という日本語訳がどこから出てくるのか全く理解できない。訳者が勝手に増幅した理解や解釈が混入し、かえって本文を悪くしている。
<br /> 最も許し難い重大な欠陥は、付録のほとんどを割愛してしまっている点だ。原著にはSources for the 50 Facts(「典拠資料」)の他に、Notes(注)、Glossary(用語解説)、Getting involved(関係諸機関)、Index(索引)がついている。これらをなくしてしまっては、この書の価値は半減してしまう。
<br /> なお、ある一冊の本を読み、内容をそのまま鵜呑みにするのは低能のやることである。この書で、たとえば「44 世界にはいまも2700万人の奴隷がいる」を読んだら、ケビン・ベイルズ著、大和田英子訳『グローバル経済と現代奴隷制』(凱風社)を読むなりして、芋づる式に読み進め、さらに調べ、データを集め、事実の正確な把握に努めるのが「学び」というものであろう。
この本の内容を一言でいうと
<br />日本にいるとわからないような世界中の矛盾のうち50のトピックスをまとめた本。
<br />この本の評価
<br />1、日本のことはあまり出ていないが(事実その1など)、それだけ日本という国は矛盾の少ないほうなのだろう(著者が見えていないだけかもしれないが)。このように、日本の良さを再認識できる本である。
<br />2、人生を考えるきっかけになる記述もある(たとえば、p186の「トライリンガリズム」を見て、日本語(民族固有の言語)、中国語(近隣言語)、英語(国際語)を学ぼうとする意欲が喚起される人がいるかもしれない(私ではないが))。
<br />3、草思社の本は、個人的には保守的な考え方に親和的な本を出すところだと思っていたが、こういうリベラルな本も出すのかと思い、感心した(リベラルが正しいという趣旨ではない)。
<br />結論―世界中の矛盾、自分の人生、日本の良さなどを考えられるいい本なので、星5つ。
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