ダイヤモンドは銃・病原菌・鉄につづいて本書を書いた。
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<br />イースター島、ユカタン半島のマヤ文明、グリーンランドの白人社会など、文明が崩壊したのがどのような状況にあったかを知るだけでも、進歩史観が圧倒的な歴史教育の副読本として有用だと思われる。実際、世界史の常識にはほとんど、これらの滅亡した文明は出てこないからである。
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<br />だが具体的に環境保護のために何をするべきかということになると、必ずしも答えは一元的ではない。正直、私にはダイヤモンドがいうほどの生態的な脆弱性を現代社会が抱えているとは、にわかには信じられないからである。
こんなすばらしい本には、めったにお目にかかれません!
<br />地球上のすべての人に読んでもらいたいと、心から思います。
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<br />唯一、難点を言えば、冒頭の、現代のモンタナ州の章は、冗長で他章ほど面白くない。ここで退屈して後の章を読むのを止めてしまう人がいたら、もったいないという意味で、唯一の欠点です。はじめて読む方は、モンタナ州は後回しにして、イースター島から読み始めることをお勧めします。
生物学者が文明を捉えると「こんなふうに見えるんだ!」という気づきを与えてくれました。
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<br />上巻では、
<br />これまでの文明崩壊で見られる5つの大きな要因について、
<br />それらが複合的に絡み合い、徐々に、かつ急速に進行していく様を、
<br />様々な事例についての社会科学的・自然科学的な調査・研究に基づいて、
<br />非常に分かりやすく解説しています。
<br />また、著者が意図していたかどうかわかりませんが、
<br />崩壊のシナリオを読んでいると、それが非線形ダイナミクスだということにも気づかされました。
<br />カオス理論・複雑系理論・ネットワーク理論のフレームをはめられそうな記述が結構ありました。
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<br />著者の「銃・病原菌・鉄」の続編という印象でした。
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<br />ただし、最新の科学・技術に絡めた言及はほとんどありませんでした。
<br />科学・技術の(後付では)間違った利用により崩壊した文明もあれば、適切な利用により存続・発展した文明もあるはずです。
<br />自然環境との共存・共栄については、
<br />今後の科学技術の発展と適切な活用によって、どれだけ上手く共存していくことができるか、
<br />ということが重要だと思います。
<br />このあたりが深く研究されていると、もっと価値のある本になっていたと思います。
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<br />なお、下巻では上巻の内容を踏まえた提言をしていますが、しりすぼみになっています。
<br />下巻の購入を検討される方は、中身を確認されたほうがいいでしょう。
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