上巻で語られた過去の文明崩壊と同様に、己の欲望のみに突き動かされる愚かな人類は、自分を生かしてくれている環境と生態系を破壊しつくし、資源をむさぼり枯渇させ、いまこの瞬間にも坂を転げ落ちるように滅亡に向かっている! 人類よ、過去に学べ!未来を見ろ! とりあえず、この本を読め!
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<br />長くて読めない、という人は、この本はどこから読んでも構わないので(下巻からでも可)、ルワンダあたりから始めてみてください。
「銃・病原菌・鉄」と同じ著者。私はヴァイキングの話が好きなので、ヴァイキングのグリーンランド入植、そしてアメリカ入植に関する記述を関心を持って読みました。その目的ならこの本(下巻)は買いです。 どの場面でも著者は「自分ならどうしたか」と自問します。これが学者とルポライターの分け目なのかもしれません。なかなか考えさせるストーリーが次々紹介されます。
<br />しかし、こうして取り上げた事例を一般に敷衍するような物言いは勇み足。厳密さに欠けます。「銃・病原菌・鉄」とセットで紹介されることが多いと思いますが、議論のレベルは一段違います。本書の執筆と本書への論評がよきディシプリンとなって、名著「銃・病原菌・鉄」が生まれたか、(修士論文を何本か書いて博士論文を組み立てるみたいに)準備作業として大テーマの一部を独立して取り上げたかどちらかに思います。
克明な各文明の分析については他の方のレビューに譲り、下巻の巻末で持続可能な社会への具体的な処方箋を記述していることを特記したい。
<br />製品選択や投票行動、政府や議員への資源管理への要請、もっと身近なところでは「環境保全なんてやはり建前」という知人に「いや、もうそうは言ってられない状況だろう」とこたえることでも事態は変わりうる。我々が黙認し続ければ、事態は破滅的になるだろうし、何かを始めることで回避できる可能性は高まるだろう。