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| 脳は空より広いか―「私」という現象を考える
(
ジェラルド M. エーデルマン
冬樹 純子
豊嶋 良一
小山 毅
高畑 圭輔
)
量子力学や宇宙の物理学は、「実験・観察」とともに「理論」がなければ成り立たない。
<br />これはだれにでもわかることだ。
<br /> しかし、ガリレオ、ニュートン以前の天文学者は
<br />天体の運動を説明できる法則というものが何たるかも知らず、
<br />ただひたすら天体を観測し、動きを記述したものだろう。
<br />実は これまでの脳科学者たちも似たようなものだったのではないだろうか。
<br />脳回路網全体がどのように生成され、作動するのか、
<br />その全体を説明しうる原理がありうることすら気づかずに、
<br />大半の脳科学者たちはひたすら脳活動のうわっつらを観測し続けてきたのではないか。
<br />
<br />しかし、少数ながら、「脳科学界のニュートン、アインシュタイン」とも擬えられる学者も いるにはいた。
<br />たとえば 清水博、Francisco Varela、そして この本の著者、Edelman。
<br />彼らは果敢にも、脳回路網全体の形成・作動原理(我輩RTはこれを「脳体制原理」と名づけた)の解明に迫ったのである。
<br />
<br /> おそらく本書を理解するには熟読を要する。すらすら読める本ではない。
<br />しかし、いま解明を求められている「脳体制原理」とはいかなるものなのか、
<br />それを知るための入門書としては最高のものに属するだろう。
<br />
<br /> 主観的体験としての意識Cは脳内に時々刻々成立するダイナミックコアプロセスC'に必然的に「伴立」する「現象」であること、
<br />また因果作用をもつのはC'のほうであること、
<br />プロセスC'の動態は物理法則に完璧に従属していることなど、
<br />たしかに著者の見解は心脳問題への一つの決着の付け方となるかもしれない。
<br />また著者は、
<br />体験(クオリア)CがプロセスC'に何ゆえに伴立するのか、
<br />その理由は「問わない」のが科学者としての正しい態度であるとみなしているように見受けられる。
<br />この点も実に考えさせられる。
<br />たしかに、科学では質量とエネルギーの関係は問えるが、その存在理由は問えない。
<br />
<br /> 付け加えると、この本、なんとなく仏教的です。
<br />「神の神経学」、「脳はいかにして<神>を見るか」と併読して、じっくり考え込んでみる。
<br /> それが すごくいいのです。
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