「転がる香港。。」を読んで著者のほかの作品も読みたくなり、手に取った。
<br />たしかに中国の人との付き合いってこの本に書かれているような部分がある気がする。
<br />損得抜きというのがなかなか難しい。
<br />そんな経験をしたことのある人には、著者が昔の知り合いをたずねてがっかりしたり、
<br />傷ついたり、考えたり、そんな気持ちがよくわかるはず。
<br />文章と写真で中国南部のあの暑さや雰囲気が伝わってくるようでとても楽しめた。
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筆者の文章スタイルがとても好き。特に人物描写が生き生きしていて、この本に登場する人達の人柄や心情がヒシヒシと伝わってきた。<p>それにしても中国人は本当にバイタリティーにあふれていて元気だ。商売熱心でがめつく、初対面の人に対しては無愛想だが、一度親しくなると家族の一員のように接してくれていろいろと助けてくれる。中国の南方を旅した著者はそれぞれの地で出会ったたくさんの中国人の生きる姿を通して、人間が生きるという営みはそれ自体が尊いものだということを教えられたと語っている。彼女が知り合ったのは皆どこにでもいる普通の人々だけれど、それぞれ人生のドラマがあり、毎日を必死で生きているのだ。
大方の読者にとって、同氏著書『転がる香港に~』を遡った2冊目の作品になるのではないかと思う。『転がる~』に見られる洗練された筆力を彷彿させる、若くて硬い当時の著者の紀行文だが、やはり作品名だけあって人間描写の体感温度が知らずのうちに感染してしまう。計画性と即興性、用心深さと無防備さ、骨太な表現を覆す繊細さ、独り旅の醍醐味を一緒に堪能させてくれる、逸品である。「ソ連は嫌いだけどロシア人は好き」「日本語を理解しないイラン人は皆良い人」と言い切る、或る意味解放された民族差別バリバリの輩には心の琴線に触れる。<p>無宗教の日本人である私が、基督教を信心する中国人の章には正直言って動揺した。深くを知らずとも、学生時代チッポケにも関わった事のある一宗教だった。著者の母校の影響がやはり、そこに少しはあったのか是非知りたいところでもある。そして、男前かつ女らしい彼女の優しい目線が、この作品の一番の魅力である事は言うまでもない。