内容が分析の体を成していないのが残念。
<br />
<br />例えば、様々な統計資料から数値を引用し、
<br />グラフが描かれているが、本文における著者の主張との因果関係が明瞭ではない。
<br />つまり、著者の主張に都合のよいデータだけが利用されている感が否めない。
<br />
<br />私個人は、その程度の分析(根拠)では、主張は保証されないと考え、
<br />ワーキングプア問題の本質を捉えることが出来なかった。
<br />
<br />ただし、そのような考えがあるのかという程度には興味を持てる内容といえる。
<br />したがって、入門の入門という位置づけになるのだろうと思う。
この本を読んで来年就職活動予定の大学生はどう思うだろうか?
<br />
<br />普通に考えると「やっぱり大企業の正社員にならなきゃなぁ〜」
<br />と思うかもしれない。そりゃ、自分の将来のことだから、そう考えるに決まっている。
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<br />でも、それだけではダメなんだろう。
<br />
<br />誰だってリストラにあう可能性はある。
<br />この本のインタビューで生生しく語っている。
<br />どんな大企業だって、5年10年後どうなっているかわからないのだ。
<br />誰だって、「ワーキングプア」に陥る可能性がある。
<br />
<br />だから、私達庶民の1人1人が現状を理解し、
<br />「このままじゃダメだ!」ということをを政治に反映させるしかない。
<br />それを実現するには多分、私が嫌いな”選挙”という方法でしかないのだろう。
<br />
<br />選挙に貧富の差は関係ないのだから。
<br />
<br />そういう意味で、1人1人が現状に危機感を持ち、社会全体に対して興味を
<br />持ってもらうきっかけとなり得る、このような良書は幅広く読まれるべき!
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<br />☆5つ
最近の流行の格差社会の本であるが、この人はBRICSや地下経済が元々の専門であり、他の人の本とは一味もふた味も違う。
<br /> 理路整然と最近の下流社会のデータを示すのは非常に勉強になるし、実例も豊富に挙げているのは参考になる。
<br /> しかし、この本の一番の売りは実は著者の態度である。最近の格差社会の著者は格差社会=能力時代として歓迎し、下流社会を冷笑する態度の人が圧倒的に多数だ。しかし、彼は真摯にこの国を憂い、下流社会の人のインタビューにも非常に情がこもっている。今時こんな人もいるのだなあ、と悲しい内容の話なのに心が癒されてしまった。
<br /> 門倉さんの本は他にも理路整然とした分かりやすく知識に即つながる良著が多く、買いだ。