ありがちなタイトルですが、かなりの良書です。
<br />実践的なテクニックを交えながらゲームシナリオ製作の技法を解説しています。
<br />著者は現在演劇の分野でも活躍されているらしく、本文の内容も著者の演劇の脚本経験から来る、本格的な助言が混じっています。
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<br />一例を挙げると、キャラクターの造形には「なぜこのキャラクターはこんな性格をしているのか?」と、キャラクターの個人史と現在の性格が関連性を持つように設定するようにと書いてあったり、あるいはキャラクターの服装がキャラクターの内面を如実に表すといった風に通り一遍でない本質的なキャラクター作りの基本を教えてくれます。
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<br />この本の特色は、キャラクター造形をいわゆるキャラクターのパーソナリティの設定とストーリー上の役割設定という具合に、キャラクター造形を二元的に捉えているところです。
<br />パーソナリティを持ったキャラクター達に、ストーリー上の明確な役割を割り振ってやれば、ある程度ストーリーの体裁を整えることは可能であることがわかります。
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<br />またキャラクター造形に留まらず、テーマ、構成、選択肢、テキスト等、およそゲームシナリオ製作に必要となる要素について網羅的に解説されているので、個人や同人サークルなどでゲームシナリオを作ってみようという向きには最適の本かと思います。
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<br />あとがきに「次はキャラクターに特化したものなんてどうでしょう?」と書いてありますが、この著者のキャラクター創作論は他のシナリオ製法の類書に比べても内容が充実しているので、是非キャラクターに特化した続編を出して欲しいと思います。
ゲームにおける「ゲームシナリオ」の作り方についてある程度「標準」と言える内容で綴られている1冊。
<br /> テーマの下にストーリーを立てて、キャラクターを設定しておき、そのキャラクターを動かす「世界」を構築する。そこまでは人によって順序は違えどどんな創作でも同じですが、そこから先はやはり創作における構成やテキスト的な部分と、ゲーム特有の音楽や画像、選択肢やフラグなどが入り混じった複雑な「ゲームシナリオ」が生成されていきます。
<br /> この本ではその工程を少しずつ分割して解説し、その度に意味を見出して読ませる本に仕上がっていると思います。
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<br /> 3部11章という構成ですが、その先頭についてくる「0章」にてこの本の内容を知る上での大体の流れがゲーム会社での会話形式で簡単にまとめられており、そこを読めるかどうかでこの本の価値も変わってくるのではないでしょうか。
読み初めは小手先の技術や制作現場のちょっとした裏話程度しか書いてない「なんちゃって」教則本なのかなぁ・・・と思ったが読み進めているうちにその印象は間違っていたと気づいた。中身は意外に(?)まともだ。
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<br />身近な(ただ、最近のクリエイター志望の人間にとってポートピア殺人事件が身近かどうかはやや疑問だが・・・)ゲームや漫画、映画などを例にとりながら、わかりやすくストーリーやキャラクターの作り方、構成、ゲームシナリオの形式などを、現役のシナリオライターらしくさまざまなテクニックを紹介しながら解説している。
<br />また、軽くだが、企画段階についても触れられているので、そちらに興味がある人も買って損はないと思う。
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<br />世の中にはクリエイター志望の人間を食い物にするためだけに出ているような教則本も多い中、この本はある程度のクオリティを持った本だということができる。
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<br />実際ゲームのシナリオを書きたいが、どのように書けばよいのか判らない人の背中を押してくれる、良書ではないだろうか。また別にゲームシナリオに興味はないけど・・・という人も、一度読んでみると良いかもしれない。読み物としても割と面白いし、どのようにゲームシナリオが作られているのか判るとゲームをプレイしたときに、制作者の意図をより明確にくみ取ることが出来るので、よりゲームを楽しめるようになるからだ。