売春防止法の施行で、旅館や飲食業に転業した赤線地域のお店のいくつかは、いまでも裏風俗として現役で営業をしている事実を知り驚きました。本書は、日本各地の色里を訪ね、実際に遊んだ上でのルポになっています。売春防止法が昭和33年だから、既に50年近くが経っています。ソープ、ヘルスと気軽な性風俗が表通りで堂々と営業している時代にもかかわらず、表向きは旅館やスナックとして営業しているこれらの店で綿々と当時と同じサービスが供給され、また、それを求める人達がいることに不思議な嬉しさを感じます。まだまだ日本の多様化は失われていないようです。
ロードサイドにファミレス、大型パチンコ店、量販店が立ち並ぶ地方都市の風景は、いまや全国均一になりつつある。“地方の時代”とかなんとかいいながら、この無個性化、画一化は、寂しくも悲しくも恐ろしくもある。<br> そんな時代に、街の陰の部分、湿った部分を丹念に掬い上げて記録する、こうした企画は貴重だ、というか興味津々である。赤線時代のなごりを残すタイル装飾のなんと味わい深いことよ。飲食店や風俗店の並ぶ裏通りや路地、袋小路も、土地によってみな個性があり、決して均一ではない。もちろんそこに介在する様々な立場の人たちも...<br> この色町探訪記は、文末に訪れた年月、所在地の概要、所要料金を示すスタイルが、アルペンガイドを彷彿とさせる。なんというか「●●ウォーカー」的な普遍的なデータを標榜したものではなく、具体的な個人の過去の記憶なのである。アルペンガイドが自然によってその道程が通行不能になっている様に、この本を片手にその土地を訪れても、もはやその店はないかもしれないし、女の子は居ないかもしれない。もしかするとその街すら無くなっているかもしれない。それだからこそ、街や人は面白いということをあらためて教えてくれる本なのだ。少なくとも通り一遍の観光地やグルメ満載の旅行情報誌よりは旅情をかきたててくれる。個人的には、本筋とは関係ない横浜・曙町の中華「一番」の記述に共感してしまった。そう、旨くて良心的で猥雑なあの店も「●●ウォーカー」には絶対紹介されないだろうな。
この著者は、以前「赤線跡を歩く」という本を書き上げている。<br>その本では、当時使われていた<建物&町並み>を中心に<br>カラ-写真で現在の様子をレポ-トしていたのだが<br>今回はさらに一歩踏み出し旧遊廓周辺の風俗までレポ-トをしている。<br>また、写真はモノクロが多く文章をメインにおいている。<br>北海道から九州まで代表的な色町を実際に体験した紀行文である。