今まで論文の書き方の本を何冊か読んだことがあるが、SEがシステム開発の過程で書く文章作成を指導する本としてこの本が適切だと考える。その理由は、例題が実務に即していること、および簡単だが日ごろ見落としていることが具体的に手際よく書かれていることである。
<br />「が」「は」「まで」「までに」といった、いつも使っている助詞の使い方ひとつで受け取るほうの解釈にバラツキが出るという指摘は、わかっているつもりの日常の文章作成の盲点をついたものといえる。また、文章の書き方ひとつで億円単位で開発費が飛んでしまう、という指摘もSEの文章作成の重要性を改めて認識させられるものである。
<br />読んでいて薀蓄を楽しむことができる。一通り読んだあとは文章を書くときの参考書として使える。
後輩のために50ページほどのマニュアルを作成したことがあるのですが、トピックスの選び方、文章表現、例の出し方等について土日を潰して1か月以上の時間を使った経験があります。
<br /> 本書は日本のシステム開発の現場で文章表現の貧弱さを何とか救いたいという危機意識から、有志によるプロジェクトとした立ち上げた結果の成果物とのこと。筆者にはその労についてねぎらい、敬意をまず払う必要があると思います。
<br /> 内容については、システム開発に関する文章の明晰性を向上させたいと願う初心者向けではありません。むしろ後輩を指導しなければならないマネージャー世代の教科書として、様々なトピックを網羅的に取り上げようとされています(その方針が空回りしているのは結果として残念です)。
<br /> 個人的にお薦め出来ないのは小林秀雄とベルグソンを持ち出してきて「システム開発者は哲学を勉強することが文章を書く際に役立つ」という論を展開されたり、日本語と英語の構造比較をされているのですが、だから何?という結論になっています。
<br /> さらにレビューの方法や、システムライフサイクルに話題が拡散してしまい限られた紙幅のなかで、舌足らずの記述となっています。
<br /> 現状を何とか改善したいという熱意がシステム開発における様々なフェーズについて言及しようとされたのでしょうが、システム開発における明晰な文章を書くという点に対象を絞るべきと感じました。
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この本の第3章から第5章は、日本語の特徴から始まって文章の正確さ、わかりやすさとは何かをポイントをとらえてわかりやすく説明しています。
<br />文章作成のノウハウ本を探してきましたが、やっとぱっと見てわかりやすい本が出てきたというのが実感です。
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